1994 Fiscal Year Annual Research Report
差分法に対する新しい安定性概念の解析とCahn-Hilliard方程式での検証
Project/Area Number |
05750063
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
降旗 大介 東京大学, 工学部, 助手 (80242014)
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Keywords | 差分法 / 数値的安定 / Cahn-Hilliard方程式 / フーリエ展開 |
Research Abstract |
本研究により、降旗は非線形偏微分方程式に対して差分法を適用した場合の新しい数値的安定条件を提案し、それが十分に実用的であることを示すことに成功した。これは数学的に厳密な保証をもたらすものではないが、概念的には十分であると期待される。 具体的には、局所フーリエ展開という数学的に新しい解析方法を考え、これにより非線形性を無視したりすることなく本来の非線形偏微分方程式に従う波形を各モードの成分波に展開する。これにより、各モードの成分波の微小時間での成長速度が計算できる。さらに、数値計算に使用する差分スキームに対しても全く同様の解析を行なうことで、数値計算の時各モードの成分波が微小時間 でどのように成長するかがわかる。そして、差分スキームに従う波形の各モードの成分波の微小時間での成長速度が本来の偏微分方程式に従う波形の各モードの成分波の微小時間での成長速度以下になるように、パラメータの範囲を定める。これが、本研究で提案した数値的安定条件である。 さらに、本研究において、この数値的安定条件が実際に効力を持つか、実用的であるかなどを調べるため、大型計算機を使用して様々な数値実験を行なった。具体的には、Cahn-Hilliard方程式と呼ばれる非線形偏微分方程式を対象とした。これは数値計算上非常に不安定であり、数値的安定条件を示そうという本研究の実験対象としては非常に適したものである。結果としては、非常に満足のゆくものであった。本研究で提案した方法により、数値的に安定であると予測されたパラメータを用いた数値計算は全て例外なく安定に計算でき、少なくとも、本研究で提案した数値的安定条件が十分性を持つことが示された。また、本研究により、当然安定不安定の臨界条件も予測されるが、これも3%程度の誤差で正しいことが数値実験上示された。 結論として、丸め誤差などの影響を調べるという目的には達しなかったものの、おおむね目的は達せられたといって良いだろうと思われる。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 降旗大介 恩田智彦 森正武: "Cahn-Hilliard方程式の差分法による数値的解析" 日本応用数理学会論文誌. 3. 217-228 (1993)
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[Publications] Daisuke Furihata,Tomohiro Onda and Masataka Mori: "A Finite Difference Scheme for the Cahn-Hilliard Equation Based on a Lyapunov Functional" Nonlnear Mathematical Problems in Industry. II. 347-358 (1993)