1993 Fiscal Year Annual Research Report
現代における橋梁デザインの規範的概念とその表現手法に関する研究
Project/Area Number |
05750455
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
佐々木 葉 名古屋大学, 工学部, 助手 (00220351)
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Keywords | 構造デザイン / 橋梁 / 景観 / デザイン思想 |
Research Abstract |
(1)事例収集と整理:本研究の目的にかかわる国内外の橋梁デザイン事例収集を行い、設計主旨、デザイン・構造・施工の特徴、デザインイメージを、文献及び現地踏査によって調査、整理した。 (2)近年の橋梁デザインの傾向:上記調査により橋梁デザインは、それが重視される背景(地域活性化、豊かな社会、景観保全)と、橋梁のデザインが決められていくプロセス(建築家等デザイナ-の参画、委員会、コンペ、エンジニア主導、マニュアル化、住民参加)によってその特徴は把握されることが明かとなった。またデザインの指向には、橋梁美学の古典的原則を踏襲した正統派、構造体には必ずしもこだわらないポストモダニズム、そして、力の流れのイメージにデザインのアイディアを求める新構造派、の3つを指摘することができた。 (3)新構造派のデザイン思想と表現手法:上記3つの指向のうち、新構造派では、モダニズムの設計思想を踏襲しながらも造形の多様性・重層性を意図し、力学的に合理的な答をできるだけシンプルな形によって得るのではなく、むしろ多様な力の流れのイメージ自体を重視していることが明かとなった。 またこうした指向の橋梁のデザイン手法の特徴は以下のとおりである。 ・一つの橋梁にコンクリート、スチール、場合によっては木といった複数の材料を組み合わせるものが多くみられる。 ・力の流れのイメージ、材料の構造的特性の表現を強調するために、ディテ-ルのデザインが重要視されている。 ・構造物本体とともに光と影、夜間照明などの演出効果を意図した、複合的な形態が用いられる。 ・橋梁の複合的な機能(例えば歩行者の快適性や生態系への配慮)を重視し、それへの対応が複雑な形態へのアイデアソースとなっている。 (4)構造・施工上の特徴:新構造派のデザインにおける複合材料の使用および複合的な部材の統合に際しては、新たな構造解析が加えられている。また形態の複雑化に対し、施工方法の合理化(プレキャスト化等)がデザイン時に検討され、システム化されたデザインへと展開している。 以上より、現代の橋梁デザインにおける新たな規範概念としては、構造以外の橋梁の複合的な機能(利用者の快適性、生態系への配慮など)、施工のシステム化を指摘することができる。今後はこうした概念からの橋梁デザインの読み解きと技術的な考察を行なうことが必要であるといえる。
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