1993 Fiscal Year Annual Research Report
ヒートパルス速度を利用した実森林流域における蒸散量推定法の確立
Project/Area Number |
05750490
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
吉田 弘 徳島大学, 工学部, 助手 (10210717)
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Keywords | 森林流域 / 蒸散量 / ヒートパルス速度 / 土壌水分 / 蒸散抑制 / Penmanの可能蒸発散量 / 流域水収支 |
Research Abstract |
過年度に開発された蒸散量推定モデルでは,モデルパラメータ同定の際にヒートパルス速度および実測された蒸散強度を必要としていた.本年度は現地で実測が困難な蒸散強度の真値の代用として,一高度における気温,相対湿度,風速および純放射量(または日照時間)のデータから算出されるpenmanの可能蒸発散量に樹木水分量の指標である水分ストレス量の関数として表される蒸散係数を乗じた値を蒸散強度として与えることでモデルパラメータを同定する手法の開発を行った.一方で,土壌水分量が減少すると蒸散強度が低下する蒸散抑制現象を評価するために,上記の蒸散モデルとは別に樹木の根系による土壌水分の吸水強度と土壌吸引圧(サクション)との関係を定式化し,吸水サブモデルとして開発した.さらに,1点での観測値からでは単木蒸散量しか推定できないことから流域スケールでの蒸散量を推定するために,流域を複数の斜面に分割し各斜面上での全天日射量を利用してヒートパルス速度を観測した斜面での蒸散量を流域全体へ拡張する手法の開発を行った. 本モデルを徳島県白川谷森林試験流域での観測値(1992年1月〜12月)に適用してモデルに含まれる10個の未知パラメータを同定したところ,モデルの基本構造と関連する6個のパラメータは全ての観測値を通して唯一の値が同定された.また,蒸散過程の季節変動を反映する蒸散係数に含まれる2個のパラメータについては,いずれとも夏季に最大値,冬季に最小値をとる1年周期の変動が認められた.蒸散抑制と関連する2個については蒸散が抑制されるほどに土壌水分の減少が認められなかったため同定されなかった.流域スケールへ拡張された蒸散量を長期間における流域水収支計算結果から算定される蒸散量と比較したところ,両者は良好な精度で一致した.
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 吉田弘・端野道夫,村岡浩爾: "ヒートパルス速度を利用した蒸散量推定のための数理モデルの提案" 水文・水資源学会誌. 6(3). 244-253 (1993)
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[Publications] 吉田弘・端野道夫,村岡浩爾: "ヒートパルス速度と微気象データを利用した林木蒸散量推定法の提案" 水文・水資源学会誌. 6(4). 350-357 (1993)
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[Publications] M.HASHINO and H.YOSHIDA: "Estimation model of single tree transpiration based upon heat pulse velocity and micrometeorological data" IAHS Publication. 212. 137-144 (1993)