1993 Fiscal Year Annual Research Report
拡散変態における格子のせん断変形の役割に関する研究
Project/Area Number |
05750596
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
古原 忠 京都大学, 工学部, 助手 (50221560)
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Keywords | 相変態 / 時効析出 / 拡散 / 格子対応 / レッジ機構 / 界面構造 / 結晶学 |
Research Abstract |
当初研究計画に則って平成5年度に得られた研究結果を以下に示す。 大気中溶解によって作製したA1-15mass%Ag合金を、823Kで溶体化後623Kで種々の時間等温度時効を施し、fccalpha母相よりhcpgamma'相を析出させ、その組織観察を行った。gamma'相は庄司-西山の関係を満たして母相の(111)alpha面に平行な板状結晶として析出していた。またgamma'相の生成に伴い、試料表面には表面起伏が発現した。gamma'板の成長は、板面に生成したショックレー部分転位である成長レッジの移動によって起こる。成長レッジの原子構造を高分解能電顕により調べた結果、成長レッジのライザー界面は整合であることが明らかとなった。同様の界面構造の観察実験を、Ni-45mass%Cr合金のfcc母相から析出するbcc相についても行った結果、析出物はレッジ機構により成長し、成長界面はやはり整合であることが明らかとなった。成長界面の構造の原子モデルを観察結果に基づいて構築した結果、成長レッジのライザーはマルテンサイト変態のようなせん断変態での格子変化を司る変態転位として記述できるステップを含んでおり、成長レッジの移動により変態転位がすべり運動をしたのと同じ原子の動きによって格子変化を起こすことが見出された。このことは、成長界面での母相から生成相への原子の移動が格子位置の対応を伴って起こることを意味しており、表面起伏が発現する原因であると考えられる。 一方、A1-15mass%Ag合金の単結晶材を作製し、溶体化後弾性限内での応力(19MPa)を負荷した状態で623Kで時効処理を行った場合には、gamma'相のバリアントに特定の配向は見られなかった。これは、本合金の時効温度での弾性限が低いために、弾性応力による機械的駆動力が析出の化学的駆動力の十分の一以下と非常に小さかったためであると考えられる。
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