1993 Fiscal Year Annual Research Report
機能性誘電体薄膜の高温電気特性に及ぼす微構造の影響
Project/Area Number |
05750609
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
菊田 浩一 名古屋大学, 工学部, 助手 (00214742)
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Keywords | 薄膜 / ゾル-ゲル法 / KTN / 誘電特性 |
Research Abstract |
本研究では、薄膜状誘電体の特性評価、特に温度変化に対する誘電率等の変化を再現性良く行うために必要と考えられる測定セルを作製し、予備的な実験を行った。例えば、Ta/Nb比が電気的,光学的諸性質に大きな影響を与えるKTN(KTa_xNb_<1-x>O_3)薄膜の場合には、特に低温条件からの測定が重要であるが、本研究では、ゾル-ゲル法によって合成した薄膜について測定を行った。この測定によってTa量をx=0.35,0.50,0.65のように変化させた場合に、明らかに試料の持つ分極と印加電場との関係に違いが見られた。x=0.65の組成については、通常室温以下では自発分極を有する強誘電体と考えられているが、今回調製した試料では、菱面体晶として安定であると考えられるおよそ50Kの極低温まで冷却を行うことによって、強誘電性の特徴であるヒステリシスループを観察することが可能となった。しかし誘電率の温度依存性などを見た場合、薄膜ではバルクのサンプルとは異なり、基板からの影響を無視できないことも明かとなった。基板の選択は、配向性などの制御には重要な因子であるが、物性の面からは、成膜温度及び室温でのマッチングの状態により生ずる薄膜への応力が、相転移温度などに大きく影響を与えていると考えられる知見を得た。即ち熱膨張などは、薄膜と比較して明らかに厚みの大きい基板によって決定され、特にエピタキシャル的に薄膜が成長した場合には、基板が薄膜の格子を歪ませる作用も大きくなるものと考えられる。現在は、X線的手法や電子顕微鏡観察を用いて応力の影響を評価し、検討を続けている。今後はさらに温度を上昇させた場合や他の系などへの応用を進めるとともに、誘電体だけでなく半導体などにもこの手法を試みたい。
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