1993 Fiscal Year Annual Research Report
中性子散乱による水素化した希土類系合金アモルファス薄膜の構造解析
Project/Area Number |
05750613
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
坂口 裕樹 大阪大学, 工学部, 助手 (00202086)
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Keywords | LaNi_5 / 水素貯蔵 / アルモファス / 薄膜 / 中性子弾性散乱 / 構造解析 |
Research Abstract |
本研究は、中性子弾性散乱を利用した局所構造解析により、水素を吸蔵させたアルモファスLaNi_5薄膜中の水素の占有位置を明らかにすることを目的としている。その結果を結晶バルク試料の場合と比較することにより、両試料間における水素吸蔵特性の違いの原因を解明できるものと考えている。アモルファスLaNi_5薄膜とそれを重水素化したアモルファスLaNi_5D_<2.5>薄膜について中性子弾性散乱実験を行ったところ、重水素化した試料の二体分布関数において、D-Ni原子相関に基づくピークが相関距離1.72Åの位置に現われた。中性子回折により得られているLaNi_5D_7結晶バルクの結果を基にすると、このピークには6種類の異なった原子間距離を有するD-Ni原子ペアが含まれている。その中の最大の原子間距離は1.68Åであり1.72Åに及ばないことから、アルモファス化するとLaNi_5水素化物中のD-Ni原子間距離が増大することが明らかになった。また、D-Ni原子相関に基づくピークより求めたD原子の第一隣接Ni原子配位数は0.792であった。この値は、LaNi_5において考えられる八面体と四面体の水素占有サイトの内、八面体サイトに21.4%、四面体サイトに78.6%の水素が占有された場合の配位数に相当する。アルモファス膜と同じ水素濃度(D/LaNi_5=2.5)において結晶バルク中の水素はほぼ100%八面体サイトに占有されていることから考えると、アルモファス膜の場合、水素は相対的に四面体サイトの方に占有され易いことがわかった。ただし、その占有原子数は合金一式量当たり1.97個であり、結晶における占有原子数3個より小さかった。即ち、四面体サイトにおいてもアルモファス試料の場合は結晶試料よりも水素が占有されにくくなっていることが示された。他方、アルモファスLaNi_5D_<2.5>薄膜の二体分布関数において、約2.7Åの相関距離に現われるピークよりD-La原子相関を抽出し、D原子の第一隣接La原子配位数を求めたところ、0.748であることがわかった。この値を、結晶LaNi_5D_<2.5>の構造に先にD-Ni原子相関より推察された各水素サイトの水素占有率を考慮して算出したD原子の第一隣接La原子配位数(0.714)と比較したところ、ほぼ一致していることが明らかになった。従って、D原子に第一隣接するNi原子との相関を基に求められたアルモファス膜における各水素占有サイトの水素占有率の妥当性が、D-La原子相関からも裏付けられることがわかった。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] H.Shirai et al.: "Effects of the Oxide/Metal Exposed Interface on Hydrogen Permeabilities of V_2O_5/Cu Multilayered Films" Chemistry Letters. 239-242 (1994)
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[Publications] H.Shirai et al.: "Hydrogen Permeation through Various Oxide/Metal Multilayered Films" The Journal of Physical Chemistry. 97. 6007-6010 (1993)
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[Publications] 太田時男監修 足立吟也・坂口裕樹: "水素エネルギー最先端技術 第3章第2節-金属膜による水素の分離-" エヌ・ティー・エス(印刷中),