1993 Fiscal Year Annual Research Report
アルカリリン酸塩融体内における網目構造形成過程に関する中性子非弾性散乱による研究
Project/Area Number |
05750651
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
加美山 隆 北海道大学, 理学部, 助手 (50233961)
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Keywords | 無機ガラス / ガラス転移 / 中性子散乱 |
Research Abstract |
本研究は、中性子準弾性散乱によりアルカリリン酸塩融体内のPO_4四面体の揺動運動を測定することでPO_4ネットワークの形成過程を調べることを目的としたものである。試料としてはNa_2OとP_2O_5の1:1の混合系を用いた。理想的にはこの混合比でリン酸塩ガラスはそのネットワークが分岐点を有しない1本のPO_4重合体からなるはずであり、溶融〜ガラス状態の変化においてどのような大きさのPO_4重合体からネットワークが形成されていくのか興味深い。 試料はリン酸二水素アンモニウム(NH_4H_2PO_4)と炭酸ナトリウム(Na_2CO_3)の混合物を真空中で溶融・分解させて作成した。この試料は300℃以下でも固化せず非常に安定して過冷却する。作成試料は粉末にして、中性子非弾性散乱用円筒型石英セルに真空封入した。中性子散乱の測定には高エネルギー物理学研究所・ブ-スター利用施設中性子散乱実験室に設置されているLAM-40型中性子準弾性散乱分光器を使用した。この装置はエネルギー移行omega=-4〜10meV、弾性散乱位置において分解能が200mueVで運動量移行O=0.2〜2.5A^<-1>の範囲の動的構造因子S(O,omega)を測定することができる。試料の取り付けでは抵抗線加熱型真空炉内でアダプターを介して石英セルを支え、それにより試料の昇温を行った。実験の測定では真空炉の能力及びマシンタイムの都合上、融点上の600℃、過冷状態の400℃、ガラス状態り室温の3点のみで行い、さらに各温度に保持した石英セルのバックグランドと標準試料のバナジウムの測定も行った。測定データの処理は東北大学大型計算機センターで稼動中のプログラムを用いてバックグランド、カウンター効率、吸収、エネルギー窓幅等の補正を行い、試料の動的構造因子S(O,omega)を得た。 その結果では、過冷状態と600℃の動的構造因子S(O,omega)のスペクトルの概形はガラス状態のそれとほぼ変わらず裾に分子内揺動運動モードを表す幅広い準弾性散乱スペクトルが見られない。このことはNa_2O-P_2O_5のリン酸塩ガラスでは融点より高い温度においてもPO_4四面体を骨格としたネットワークがほぼ完全に形成されていることを示している。一方、スペクトルの高さはガラス状態に向け温度が下がるほど高くなるという変化を示し、このガラスの融体はネットワーク鎖の揺動運動による流動性で特徴づけられているものと考えられる。
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