1993 Fiscal Year Annual Research Report
ポリマーの炭素化に対する鉄添加物の促進効果のその場赤外分光法による解明
Project/Area Number |
05750696
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
尾崎 純一 東北大学, 反応化学研究所, 助手 (30214125)
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Keywords | ポリマー炭素化 / 鉄触媒 / その場赤外分光 |
Research Abstract |
申請者は有機物の炭素化を縮合芳香環系を得る手段として据え、その中間段階の反応制御による炭素質をベースとした機能材料の開発を目指した研究を行っている。その一連の研究の中でポリマーに予めフェロセン等の鉄化合物を混入し400℃の低温で炭素化するとその電気伝導度は無添加系に比べて約10桁増大し、これは鉄の炭素化促進効果によることを報告している。本研究では鉄含有炭素質の機能性探索の前段階としてどのようにして鉄がポリマーの炭素化を促進するのかについて不活性雰囲気下で昇温可能なステージを持つ顕微FTIR分光系を試作して検討することを目的とした。 1.昇温ステージを有する顕微なFTIRの試作 不活性雰囲気下で加熱可能な顕微ステージ、及び測定スペクトルをFTIR装置のRS-232C回線を介してパーソナルコンピュータのハードディスクにデータを収納できるシステムを構築した。 2.ポリ塩化ビニリデン(PVDC)-フェロセン混合系の測定 試料としてはPVDCの熱THF溶液をメタノールに注ぐことにより調製したPVDC微粒子にフェロセンを含浸担持したものを用いた(Fe重量比=0.10wt%)。これをKBr粉末で20wt%に希釈し不活性雰囲気下での昇温を行いつつ赤外スペクトルの測定を行った。 得られたスペクトルの解析においてはPVDCの炭素-炭素単結合(C-C)の骨格振動及びアルケンまたは芳香環の炭素-炭素二重結合(C=C)に着目した。これらの積分強度を温度の関数として見たときの結果の概略を次に示す。 (1)昇温とともにC-Cの強度は減少し、C=Cの強度は増加する。 (2)鉄を導入した系のC=C発生温度は、約130℃で無添加系に比べて20℃程低温にシフトする。 (3)フェロセンの特性振動吸収は約130℃で消失し、この温度はC=C発生温度に一致する。 以上の知見よりフェロセンは約130℃程度の反応初期において分解し、原子状または微分散状態の鉄を与え、これがPVDCの脱塩化水素を促進し、二重結合の形成及び芳香環の形成を低温にシフトさせるものと考察される。
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