1993 Fiscal Year Annual Research Report
ハイマツとキタゴヨウの2種間における遺伝子移入・雑種形成に関する研究
Project/Area Number |
05760004
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
戸丸 信弘 筑波大学, 農林学系, 助手 (50241774)
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Keywords | ハイマツ / キタゴヨウ / ハッコウダゴヨウ / 遺伝子移入 / 雑種形成 / 遺伝変異 / アイソザイム / DNA |
Research Abstract |
立山(美女平-弥陀ケ原-室堂-一の越)のゴヨウマツ群落からハイマツ(Pinus pumila)50個体、キタゴヨウ(P.parviflora var.pentaphylla)51個体、さらに両樹種間の自然雑種と考えられるハッコウダゴヨウ(P.× hakkodaensis)43個体の当年生葉を分析用試料として採取した。 1.DNA分析: CTAB法を改変した方法を用いて当年生葉から全DNAを抽出した。今後、PCR法により作成した葉緑体およびミトコンドリアの10数種の遺伝子をプローブとしてRFLP分析を行う予定である。 2.アイソザム分析: 当年生葉を用い、27酵素種について分析を行った結果、9酵素種の13遺伝子座を遺伝マーカーとして利用できることが判明した。 3.アロザイム変異によるハイマツ、キタゴヨウおよびハッコウダゴヨウ群落の集団遺伝学的解析: 遺伝的変異の大きさを、(1)多型的遺伝子座の割合(95%水準)、(2)1遺伝子座あたりの対立遺伝子数、(3)1遺伝子座あたりの対立遺伝子の有効数および(4)平均ヘテロ接合度(期待値)で見積もった。その結果、ハイマツでは53.8、2.00、1.37、0.222、ハッコウダゴヨウでは69.2、2.15、1.46、0.272、さらにキタゴヨウ手は46.2、1.69、1.37、0.206であり、他の裸子植物に比べ高い値であった。遺伝的分化の程度を表す遺伝子分化係数(Gst)は0.156であり、比較的高い値であった。さらに3樹種間の遺伝距離からハッコウダゴヨウはキタゴヨウよりもハイマツに遺伝的に似ていることがわかった。また、分析した13遺伝子座のうちのShd-1、Shd-2、Pgm-1、Pgm-2などの遺伝子座の対立遺伝子頻度には、ハイマツ-ハッコウダゴヨウ-キタゴヨウの順に勾配がみられた。このことから雑種形成や遺伝子移入等により片方の樹種から他の樹種へ遺伝子流動が起こっていることが示唆された。
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