1993 Fiscal Year Annual Research Report
農薬の使用中断が水稲の生育・収量並びに病害虫・雑草の発生に及ぼす影響
Project/Area Number |
05760014
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
斉藤 邦行 岡山大学, 農学部, 助教授 (60153798)
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Keywords | 水稲 / 有機栽培 / 水田生態系 / 雑草 / 病害虫 / 農薬 |
Research Abstract |
有機質肥料を経年的に施用している水田において,農薬の使用回数に応じて段階的に試験区を設け,農薬の施用が水田生態系の生物相および水稲の成育収量に及ぼす影響を調査した. 水稲品種日本晴を供試し,慣行に従ってポット育苗した苗を6月15日に機械移植した.試験区は基肥として推厩肥と発酵鶏糞を施用した水田に,無農薬区・減農薬区(菜種油粕追肥)と有農薬区(化成肥料追肥)および基肥と追肥に化成肥料を用いた慣行区を設けた.施肥量は10a当たり窒素成分で基肥5kg,追肥6kgとした.無農薬区には広葉雑草,浮草,藻類が多く発生し,優占種はコナギであった.除草剤の施用により雑草の発生は抑制されたが,生育中期以降藻類が発生した.これまで,収量の年次変動には雑草,特にコナギの発生量が関係したが,低温・寡照であった本年度はコナギの乾物重の増加は小さく,収量に及ぼす影響は小さかった.また,水稲の生育収量に甚大な被害を及ぼすほどの病害虫の発生は認められなかった.水稲群落の動物相は,農薬の施用によりセジロウンカ・ツマグロヨコバイ・双翅目昆虫の個体群密度は低下したが,ヒメトビウンカでは大きくなった.しかし,害虫の天敵昆虫である真正クモ目や蜻蛉目(トンボ)の密度も低下した.田面水中のミジンコ類では,初期にはカイミジンコが大量に,それに比べタマミジンコがやや少なく発生し,稲が繁茂してくるとケンミジンコが多く発生した.ミジンコ類,イトミミズの発生に対する農薬の顕著な影響は認められなかった.本水田は旭川水系の用水を用いているため,フナやメダカなどが水田に多く侵入することが認められた.ホウネンエビ,ザリガニ,ヤゴそして多くの昆虫の幼虫では農薬に対する感受性の高いことが明らかとなった.
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