1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05760052
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
平井 英明 京都大学, 農学部, 助手 (20208804)
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Keywords | 熱帯雨林 / 温帯林 / 水分保持 / 養分保持 / 土壌母材の風化速度 / 土層の厚さ |
Research Abstract |
【目的】本研究は申請者がこれまで用いてきた森林土壌の特性を土壌生成学的側面から評価することによって、マレーシア・サラワク州の熱帯雨林下に生成する土壌と韓国において生成する森林土壌の特性を吟味することから、両国の森林土壌の水・養分保持機能の差異を明らかにすることを目的としたものである。 【結果】(1)、マレーシア熱帯雨林での研究課題はフタバガキ科Dryobalanops aromatica(Da)とDryobalanops lanceolata(Dl)の分布と土壌の関連性を吟味することであった。その結果、熱帯多雨林気候下の中でDaは乾燥した尾根筋に分布し、一方、Dlは谷筋かもしくは粘質な土壌上に分布していることが判明した。さらに理化学性を検討したところ、前者は交換性塩類が少なく、後者は多いという結果が得られた。さらに、本研究課題により購入した土壌水分張力、地温自動記録装置を用いて水分環境をモニターした結果、前者の方が後者よりも乾燥する傾向にあることが判明した。(2)、温帯気候に属する韓国においては、森林土壌の垂直分布特性を土壌生成学的観点から吟味した結果、標高が高くなり、年平均気温が低くなるにつれて、物理的性質のうち孔隙率、透水指数、水分吸着率が増加し、化学的性質のうちpH(NaF)、リン酸保持量、全炭素含量が増大し、鉱物的性質のうち非晶質酸化物含量および鉄の活性度が増大していることがわかった。このことはこれまで申請者が日本の森林土壌で得た結論と同様であった。(3)、(1)(2)で得られたマレーシア、韓国の森林下のそれぞれの土壌の特性を比較検討した結果、熱帯雨林下の土壌は温帯林下の土壌に比べて著しく深いことが判明した。一方、交換性塩基含量、全カルシウム含量、全炭素、全窒素含量、水分保持量は同じ深さの層位を比較すると熱帯雨林下の土壌では温帯林下の土壌に比較して低い傾向にあった。以上のことから、樹高60mにもおよぶ高木を支えるには熱帯雨林下の土壌は現在の状況では貧栄養であるので、大きなバイオマスを支えているという事実を説明するには土壌の深さを考慮に入れる必要がある。ここで土壌の生成因子である気候の属性の年降水量、年平均気温をみてみると熱帯雨林ではそれぞれ約2700mm,27℃、温帯林では1100-1500mm,7-11℃であった。土壌の風化という観点からすると前者は後者に比べて温度が高く、雨量が多いので母材の風化速度は速く後者は遅い。このために、現時点ではさきに述べたような差異が生じていると考えられる。しかしながら、風化速度が速いということは生育に必要な養分の有効化が速く、その量も多いとも解釈できるし、また、土層が深いということは温帯林よりも多くの水分を保持できることが容易に予想される。 この観点にたてば、熱帯雨林環境下では森林の生育とそれを支える土壌母材の風化による養分の有効化が旺盛に行われたために、熱帯雨林下の土壌は温帯林下の土壌よりも貧栄養に現在なってしまった考えることができる。とすれば、現在の状況のみをみて熱帯雨林下の土壌が痩せており、温帯林下の土壌が肥沃であると即断してはならないようである。
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