1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05760131
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
浦木 康光 北海道大学, 農学部, 助手 (90193961)
|
Keywords | 酢酸リグニン / 液晶 / 液晶紡糸 / メソフェーズ |
Research Abstract |
1.緒言 本研究の目的は、硫酸触媒による常圧酢酸パルプ化法によって得られるリグニン(AWL)から液晶を生成する物質を調整し、最終的に液晶紡糸を行うことであった。液晶物質の調整法として2法考えられ、1つはアルキル鎖の導入やメソ-ゲンとなる官能基導入などのAWLの化学修飾による改質である。もう1つは、高機能の炭素繊維を調整するためピッチ系原料で用いられている加熱によるメソフェーズいわゆる液晶の調整である。2番目の方法は、不均一構造の物質を熱分解と同時に、熱縮合を生じさせて、できるだけ均一構造の会合体を作り液晶を発現させるもので、不均一構造を有するリグニンの液晶化には、簡便で好適な方法と思われた。そこで、この研究では、加熱条件を変えての液晶生成を検討し、走査型電子顕微鏡(SEM)、偏光顕微鏡や熱分析により液晶生成を評価した。 2.実験 (1)AWLの液晶化:AWLを空気中の開放系及びミクロオートクレーブを用いた窒素雰囲気下で昇温速度3℃/minで160℃から430℃まで加熱し、所定温度を40minまたは90min維持した。熱処理AWLのキノリン不溶部を液晶画分としてろ過で回収し、エタノールで洗浄後減圧乾燥した。(2)顕微鏡観察:キノリン不溶部をSEM及び偏光顕微鏡により観察した。 3.結果 AWLを430℃で90min加熱した試料は、SEMでメソフェーズと思われる小球体の形成が観察された。さらに、偏光顕微鏡観察から超薄片部分にクロスニコル下での発光が観察され、液晶の生成を示唆する結果が得られた。また、160℃や250℃でもSEMよりピッチ系メソフェーズでも観察されるサンゴ状組織が見られたが、偏光観察からは液晶の形成は観察されなかった。高温処理試料は、示差走査熱量分析から液晶の熱相転移に起因すると考えられる吸熱ピークが観測され、リグニン液晶がサーモトロピック液晶に近い熱挙動を示すことが示唆された。現在、この液晶の構造を電子線解析により調べると共に、紡糸条件について検討している。
|
Research Products
(1 results)