1993 Fiscal Year Annual Research Report
魚類の卵細胞質に局在する発生生理活性因子に関する研究
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05760142
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山羽 悦郎 北海道大学, 水産学部, 助手 (60191376)
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Keywords | キメラ魚 / キンギョ / 細胞質内因子 / 始原生殖細胞 / 胚軸決定 / 母系因子 / 卵片発生 / goosecoid |
Research Abstract |
卵黄の植物極側を初期卵割期に除去した受精卵より発生してきた胚は、形態的に両生類における無体軸胚と酷似しており、除去されたのは両生類で知られている背方決定の因子と考えられた。卵片発生の実験より、キンギョの背方決定の因子は、受精直後に胚盤とは反対側の卵黄内に局在し、32細胞期には動物半球胚盤側まで移動すること、2細胞期の第1卵割面を境にした片側にこの因子が局在している卵の割合が非常に高いことが明らかになった。また、受精卵を遠心処理する実験の結果より、背方決定の因子は、1細胞期の0.7の時期までに細胞内骨格に固定されるか、次のシグナルに変換される可能性が示唆された。この様なキンギョの背方決定の因子の動態は、両生類の背方化の過程と類似していた。 背方化因子を取り除かれた胚は、リチウム処理により背方化された胚の胚盤周囲域の細胞を移植することにより、軸の回復がなされた。しかしながら軸回復胚には脊索の形成はなされていなかった。このことより、キンギョの体軸構造の形成には、リチウム処理で誘導されるgoosecoid遺伝子産物以外のいくつかの因子の発現が必要であり、これらの因子の発現に背方決定の因子が関わっていると考えられた。末受精卵より抽出されたtotalRNAには、軸回復能力は確認されず、背方化因子の実体はその他の(例えば蛋白性の)因子である可能性が残された。 キンギョ胚の始原生殖細胞(PGCs)は、受精後30時間で形態学的にその存在が確認されたが、それ以前には他の細胞と区別されなかった。組織学的にマークした胚と未マークの胚とで胞胚期にキメラ胚を作成し、マーク胚の細胞を追跡した結果、将来PGCsの派生する細胞は、胞胚期の胚盤の下部に位置していることが示唆された。植物極側の卵黄を除去された受精卵より発生してきた形態的に正常な個体には生殖細胞が存在し、生殖細胞決定因子の有無は確認されなかった。
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