1993 Fiscal Year Annual Research Report
食虫類の肺静脈壁に分布する心房性ナトリウム利尿ペプタイドの免疫組織化学的検討
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05760233
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Research Institution | National Museum of Nature and Science,Tokyo |
Principal Investigator |
遠藤 秀紀 国立科学博物館, 動物研究部, 研究官 (30249908)
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Keywords | 肺静脈 / 心房性ナトリウム利尿ペプタイド / 心筋細胞 / 免疫組織化学 / ジネズミ / ジャコウネズミ |
Research Abstract |
食虫類の肺静脈壁に分布する心筋細胞が、心房性ナトリウム利尿ペプタイド(ANP)を分泌している可能性が示唆されている。そこで、ジネズミとジャコウネズミ、および比較のためにラットを用いて、肺静脈壁心筋組織におけるANPの分布を検討することとした。そのため、肺と心臓のパラフィン組織切片を作製し、抗ANP血清を用いて免疫組織化学的検討を加えた。 ジネズミとジャコウネズミの左心房筋の心筋細胞は、抗ANP染色において強い反応を示した。一方、両種とも内径約150mumの肺内静脈の壁にまで心筋細胞が分布していたが、抗ANPの反応はジネズミにおいてより強く観察された。反応を示す心筋細胞は、肺門付近の比較的太い静脈から200mum程度の静脈枝にまで広く存在した。免疫反応は特に細胞の核周囲に強く見られた。これらの結果は、比較に用いたラットにおいても同様であった。一方、ジャコウネズミの抗ANP反応は、ジネズミに比べると弱く、特に細静脈枝では反応が確認できなかった。 以上の結果から、種間差はあるものの、食虫類の肺静脈壁心筋におけるANPの分布が確認された。齧歯類における結果と併せて考えると、小型哺乳類の肺静脈壁心筋組織はANPの内分泌機能を有すると結論することができる。従来、食虫類では、肺循環からの血流を血管壁の収縮により制御するために、肺静脈壁心筋組織が発達したと考えられてきた。しかし、本研究の結果から、これらの小型哺乳類では、心筋組織をもつ肺静脈がANPの内分泌器官として進化したと推測することができる。
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