1994 Fiscal Year Annual Research Report
培養細胞クローニングによる骨肉種の病態と治療法の検討
Project/Area Number |
05760241
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
廉澤 剛 東京大学, 農学部, 助手 (70214418)
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Keywords | 骨肉腫 / クローニング / MTTアッセイ / 化学療法 / 放射線療法 |
Research Abstract |
イヌの骨肉種は、造骨細胞由来の極めて悪性度が高い腫瘍で、ヒトと同様転移が早期かつ高率に生じ、外科的摘除、放射線療法、化学療法および免疫療法などを組み合わせた集学的治療によっても根治的治癒が困難である。骨肉種は、多彩な組織像を示すものも多く、骨肉種がポリクローナルである可能性が高いことが明らかになっているが、現在のところ、この骨肉種の重要な治療手段である放射線や抗癌剤に対する感受性がどのように異なるかについては研究がなされていない。そこで本研究では、イヌ自然発生腫瘍由来のPOS細胞から分離されたクローン細胞の中より性状の異なる4細胞、すなわち骨芽細胞型、軟骨芽細胞型、線維芽細胞型および未分化細胞型のクローン細胞について、抗癌剤ならびに放射線に対する感受性の違いをMTTアッセイで調べ、以下の結果を得た。 1.in vitroにおける6種類の抗癌剤(CDDP,MTX,MIT,ADR,VCR,5-FU)に対する各細胞の感受性は、多くの薬剤でその濃度が高い場合、細胞間で大きな差はないが、低濃度では細胞間の感受性の差は大きく、線維芽細胞型クローン細胞の感受性が低く、軟骨芽細胞型クローン細胞は感受性が高い傾向があった。4細胞すべてにおいて高感受性を示す抗癌剤は、CDDPおよびADRであり、多くの抗癌剤では細胞間の感受性の差が大きかった。 2.in vitroにおけるX線に対する各細胞の感受性は10Gy以上の線量ですべての細胞が高感受性を示すが、通常の治療に用いられる5Gy以下の線量では、線維芽細胞型および未分化細胞型クローン細胞が軟骨芽細胞型および骨芽細胞型クローン細胞に比べ、著しく低感受性を示した。 今回得られた結果から、骨肉腫を構成する各クローン細胞の感受性が異なることが骨肉腫の治療を困難にする一要因であり、また臨床上骨肉腫に対して行われている抗癌剤の多剤併用治療および放射線治療を含めた集学的治療の概念が正しことが、構成細胞の抗癌剤および放射線の感受性の観点より確認された。
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