1993 Fiscal Year Annual Research Report
新たに見いだされたアルコール脱水素酵素遺伝子の生体内機能についての研究
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05770084
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
安波 道郎 熊本大学, 医学部, 助手 (80244127)
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Keywords | アルコール脱水素酵素 / 多重遺伝子族 |
Research Abstract |
ヒトのゲノムに見いだされたアルコール脱水素酵素遺伝子ADH6の産物は、これまでに同定されているアルコール脱水素酵素のアイソザイムの構造との比較からクラスIアイソザイムに近縁の新たなクラスに属することが推測された。SunとPlappの分子進化学的な解析によれば、この新しいクラスの遺伝子は、約630万年前にI、II、IIIの3つのクラスが分岐した後、約520万年前にクラスIとの共通祖先遺伝子から分岐したものと算定され、このことからこれら4つのクラスの遺伝子はすべての脊椎動物に存在する(あるいは、かつて存在していた)と推定されている。マウスにおいてADH6に相同な遺伝子の発現分布を明かにすることは、その生体内での役割を解明する重要な手がかりになると考えられる。 マウスの諸臓器から分離したRNA10mugについて、ヒトcDNAクローン(A8)をプローブとしたノーザンブロットハイブリダイゼーション法を行い、発現の組織分布を調べた。肝、腎、心臓、脳、胸腺、精巣には発現を検出できなかった。また、副腎において18sリボゾームRNA付近に薄いバンドが見られたが、これがADH6相同遺伝子の発現を示すものであるかはさらに検討を要する。一方、同一の反応条件でヒトのクラスIcDNAクローン(pADHbeta14)をプローブとした場合には、肝、副腎、腎にこの順の強さで単一の大きさのバンドが認められ、心臓、脳、胸腺、精巣には発現を検出できなかった。 以上によりマウスのADH6相同遺伝子は、クラスI遺伝子とは異なる発現様式を示し、それゆえに特異な役割を果たしていることが示唆された。
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