1993 Fiscal Year Annual Research Report
線維化に伴う血清糖のタンパク質の癌鎖構造変化の機構と機能
Project/Area Number |
05770106
|
Research Institution | Sasaki Institute |
Principal Investigator |
福島 慶子 財団法人佐々木研究所, 生化学部, 研究員 (10250010)
|
Keywords | 肝硬変 / 肝癌 / トランスフェリン / 血清糖蛋白質 / N-結合型糖鎖 / フコシル化 / ブレオマイシン |
Research Abstract |
ウイルス性肝障害は肝炎から肝硬変、肝癌へと進展することが多い。著者のグループでは肝炎から硬変化(線維化)に伴い血清中にフコシル化されたコリンエステラーゼが顕著に上昇し、これが肝硬変、肝癌への進展の良い示標となる可能性を示した(1993)。この糖鎖変化の実体を明らかにするため、同様の変化が認められるトランスフェリン(Tf)の糖鎖の構造を解析した。まず、健常人、肝硬変、肝癌患者血清より抗Tf抗体カラムを用いてTfを精製し、透析後クロマトフォーカシング(pH6.2-5.0)によりシアル酸の結合数の違いによりS_3、S_4、S_5イソフォームを分離した。健常人TfはS_4のみであった。これらのイソフォームそれぞれ100mugからヒドラジン分解によりAsn結合型糖鎖を遊離させ、N-アセチル化後、NaB〔^3〕_4により還元末端をトリチウム標識した。これらの糖鎖をMonoQカラムクロマトグラフィー、レクチルカラムクロマトグラフィー、Bio-Gel P4ゲルろ過カラムクロマトグラフィーなどにより分析した結果、健常人、肝硬変、肝癌患者ともTfS_4はジシアリル2本鎖であった。一方、肝硬変、肝癌患者のS_5の糖鎖はC-2,6分岐した3本鎖と2本鎖がほぼ等モルであり、どちらも全れの側鎖にシアル酸が結合していた。肝硬変患者では健常人TFにはほとんど認められないFucalpha1→3結合側鎖が増加し、シアリルルイスX構造が出現していることが明らかになった。ところが肝癌患者のS_5ではルイスX構造が減少していた。細胞の線維化に伴うシアリルルイスX糖鎖が炎症時に白血球と血管内皮細胞の接着に関与している細胞接着因子ELAM-1が認識するエピトープと同じであるかどうか興味があり、シアリルalpha2→?Galbeta1→4(Fucalpha1→3)GicNAc含有糖鎖が、線維化においても何らかの細胞間相互作用を調節している可能性が考えられる。 なお、ブレオマイシン投与による実験的肺線維症ラットの血清Tfにおいても類似の変化が認められ、現在詳細な解析を行なっているところである。
|
Research Products
(5 results)
-
[Publications] K.Yamashita: "Sugar chains of serum transferrin from patients with CDG syndrome" J.Biol.Chem.268. 5783-5789 (1993)
-
[Publications] K.Fukushima: "Suppressive role of sialylated N-Ghycans in Fc receptor-mediated phagasytosis by macrophages" Biochem.Biophys.Res.Commun.192. 333-337 (1993)
-
[Publications] K.Fukushima: "Processing inhibition of N-linked sugar chains associated with induction of Fc receptor-mediated phagarytosis in the mouse monocytoid cells" Glycobiology. 3. 15-22 (1993)
-
[Publications] K.Fukushima: "N-linked sugar chain structure of recombinant human lymphotoxin" Arch.Biochem.Biophys.304. 144-153 (1993)
-
[Publications] K.Yamashita: "Sugar chains of human cord serum alpha-Fetoprotein" Cancer Res.53. 2970-2975 (1993)