Research Abstract |
運動習慣のない中高年肥満女性26名を,運動群16名(年齢53.7±6.3歳,BMI27.2±2.1:mean±SD)及び対照群10名(年齢55.2±7.3歳,BMI26.7±2.4)に分け,運動群にはVO_<max>の50〜60%の運動負荷を1日30〜60分間,週3〜4回,15週間行わせ,自律神経機能の変化とその要因を検討した。 15週間で運動群は,BMIが平均1.9,水中体重法により推定した体脂肪量が3%,安静時心拍数が4/分減少し,体重あたりVO_<max>が2.9ml/kg/分,体重あたりBMRが1.9kcal/kg/d増加したが,対照群には有意な変化はなかった。自律神経機能では迷走神経心臓枝の活動を反映する安静時のRR間隔変動係数(CV)は運動群が2.9%から3.9%に増加し,心拍変動スペクトルの0.15〜0.50Hzの積分値(HF)も運動群が125msec^2から326msec^2に増加したが,対照群には変化はなく,運動の継続により肥満者の安静時副交感神経機能が改善することが明らかになった。起立時の心拍変動特性では,初期の測定では起立によるCVの変化は認めなかったが,15週後の測定では運動群,対照群とも起立によるCVの増加が認められ,これは低周波数帯域の変動の増加の影響と考えられた。HFは初期の測定では両群とも起立による有意な変化は認めなかったが,15週後の測定では運動群のHFのみが起立により326msec^2から209msec^2と有意に減少し,運動は起立時の自律神経反射機能も改善することが推察された。 次にCVの変化量を基準変数とし,BMI,体脂肪量,体重あたりVO_<max>,体重あたりBMR,心拍数及び呼吸数のそれぞれの変化量,年齢を説明変数として重回帰分析を行った結果,F値による変数増減法にてモデルに採択されたのは体重あたりのVO_<max>の変化量のみであり,DELTACV=0.188×DELTAVO_<max>/Wt+0.449,R=0.456(p<0.05)の関係が得られ,運動による安静時副交感神経機能の改善には体重あたりのVO_<max>の増加が強く関係していることが判明した。
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