1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05770304
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
向井 敏二 東京医科大学, 医学部, 助教授 (20200230)
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Keywords | 脳外傷 / 髄液 / ミエリン塩基性蛋白 / ニューロフィラメント / ウエスタンブロッティング |
Research Abstract |
平成5年度科研費申請書に基づき、脳外傷者髄液中のミエリン塩基性蛋白(MBP)およびニューロフィラメント(NF)蛋白について検討を加えた。 1)試料:当初、試料はすべて解剖事例から採取する予定であったが、諸般の事情から東京都監察医務院での検案事例(非解剖)を主体とした脳外傷群11例、対照群32例、合計43例の髄液を検査に用いた。脳外傷群は即死例から受傷後10日間生存した例までが含まれており、一方、対照群の死因は心・大血管系障害17例、呼吸器系障害2例、消火器系障害3例、溺死3例、その他10例であった。 2)髄液中総蛋白量:Lowry法により髄液中の総蛋白濃度を測定した。脳外傷群(7.29±2.24mg/ml)では対照群(3.13±0.44mg/ml)より著明な増加が認められた。この増加は、脳神経系の損傷程度に由来しているものが考えられるが、受傷後の生存期間や死後試料採取までの時間、髄液への血液混入など諸因子の影響も否定しえなかった。 3)髄液中ミエリン塩基性蛋白(MBP)およびニューロフィラメント(NF 68Kd 160Kd 200Kd)の定性・定量 MBP標準品としてはCHEMICON社製、NF標準品としてはIBL社製を用い、さらにヒト脳組織より抽出した粗製MBP・NF懸濁液を使用した。抗MBP抗体はCHEMICON、DACO両社製、抗NF(68Kd 145Kd 200Kd)はCHEMICON社製を用いた。5倍に希釈した試料(脳外傷群・対照群)をSDSポリアクリルアミドゲルにて泳動後、Westernblotting法にて膜転写し、次いでABC法を用いて発色させたのち、デンシトメーターによる定量を試みた。結果)今回使用した各種抗体は特異性が極めて低く、複数の蛋白と交叉反応を示した。このうちMBPとみられるバンド群については、外傷群だけでなく対照群の一部にも陽性反応が散見され、また有意にMBP増加のみられた外傷例は認められなかった。一方、NFについても抗体の特異性が全般に低く、NFが外傷例のみで増加しているという所見はいずれの抗体の場合にも認められなかった。しかしながら、145Kd抗体での検索の際に、全外傷例中6例で標準品(145Kd)のバンドよりやや高分子側に高濃度に出現したバンドが確認されたが、この蛋白がNF160Kdであるか否かについては今後の検討が必要と考えられた。 5)今後の研究予定 今回の試料について、さらに特異性の高い抗体を入手して再検討を行なうとともに、脳外傷例に高い確率で比較的多量に出現していた蛋白の同定を行なう予定である。
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