1993 Fiscal Year Annual Research Report
淡蒼球外節の可逆的ブロックによる眼球運動の障害と大脳基底核の運動制御機構
Project/Area Number |
05770445
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
加藤 誠 岡崎国立共同研究機構, 生理学研究所・高次神経性調節, 助手 (30214399)
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Keywords | Basal ganglia / External pallidum / mnscimol / microinjection / eye movement / monkey |
Research Abstract |
大脳基底核の眼球運動関連領域である尾状核(Cd)-黒質網様部(SNr)系は上丘(SC)の活動を抑制的に制御し、この系の神経細胞は状況依存性の活動をする。高頻度の自発活動をするSNrはSCを持続的に抑制し、CdはこのSNrを抑制してSCに対する持続的抑制を取り除く。最近SNrの高頻度の自発活動は視床下核(STN)からの興奮性入力によって維持されていることが明らかになった。STNは、高頻度の自発活動をする淡蒼球外節(GPe)から抑制性の入力を受ける。STNの破壊は不随意運動を、GPeの局所冷却は腕の固縮・屈曲位を引き起こすことが知られ、GPe-STN系は基底核の運動制御機構の重要な鍵であると考えられる。眼球運動課題遂行時のサルのGPeから神経活動の記録から予想されるGPe-STN系の機能は,Cdからの入力により非選択的にSNrの自発活動を高進させ不必要な神経信号を抑制し、Cd-SNr系の信号の選択性を高めるということである。この仮説を試すために、眼球運動課題遂行時のサルを用いて、抑制性伝達物質GABAのagonistのmuscimolを一側のGPeに微量注入し、GPeの神経活動を可逆的に抑制して、課題遂行能力、眼球運動の変化を調べた。その結果、眼球の位置がmuscimolの注入部位と対側に向いてしまい、サルは、思うように目を向けることができなく、課題遂行が不可能となった。眼球が対側偏位するということは、注入部位と同側のSCが興奮、或いは、脱抑制されたことを示し、SCを抑止しているSNrの持続的な活動が減少する、すなわち、STNの活動が減少したことを示している。このことは、STNに抑制性出力を送っているGPeをmuscimolにより抑制する結果、予想されることは、STNの脱抑制による活動の増加であり、実験の結果は予想に反している。その理由として、GPeを抑制したことによりSTNは脱抑制されるが、この時に、大脳皮質からのSTNへの興奮性入力が過剰になり、STNが過剰に脱分極してしまい活動電位がブロック(depolarizing bolck)されてしまったため、STNの活動が全体としても、agonistであるmuscimolを注入しても不随意運動が起こることも説明できる。しかしながら、GPeを冷却したりmuscimolの注入により活動を抑制したりすると腕の固縮・屈曲位を起こし、これは、腕の筋活動が持続的に増加しているためであることがわかっている。この筋活動の増加も、GPe-STN-淡蒼球外節-視床の経路からは説明できないが、現象的には眼球運動の対側偏位と似ている。これらの神経機構はおそらくParkinson病の筋の固縮、不随意運動の基盤として重要であり、今後これらの神経機構を解明する必要がある。
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Research Products
(1 results)