1993 Fiscal Year Annual Research Report
膵腫瘍のMRによる描出能向上に関する研究:脂肪抑制スピンエコー法の有用性
Project/Area Number |
05770687
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
川嶋 明 九州大学, 医学部, 助手 (90253434)
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Keywords | 膵腫瘍 / 膵癌 / インスリノーマ / 嚢胞性膵腫瘍 / MR(magnetic resonance) / スピンエコー法 / 脂肪抑制 / 造影剤 |
Research Abstract |
目的:MRによる膵腫瘍の描出能の向上を目的として、脂肪飽和法を用いた脂肪抑制画像を通常のT1強調賀増員追加撮像し、その有用性について検討した。 対象と方法:膵癌9例、インスリノーマ5例、および嚢胞性膵腫瘍5例を対象とした。主観的評価法として、腫瘍と膵実質および膵周辺脂肪の間のコントラストを三段階、1)脂肪抑制画像が通常の画像に比べ優れている、2)差がない、3)劣っているで評価した。充実性腫瘍に対しては、客観的評価法としてコントラスト・ノイズ比(CNR)を測定した。 結果:造影前は膵癌8例(89%)、インスリノーマ4例(80%)、嚢胞性膵腫瘍2例(67%)で脂肪抑制画像が優れ、造影後は膵癌4例(67%)、インスリノーマ3例(100%)、嚢胞性膵腫瘍3例(75%)で脂肪抑制画像が優れていた。造影前の膵癌と膵実質のCNRの絶対値は脂肪抑制後上昇し(p<0.001)、このため脂肪抑制画像が膵癌を膵実質より明瞭に分離させた。造影後は膵癌と脂肪とのCNRは、全ての症例で脂肪抑制により負から正に逆転した。膵癌は周囲の脂肪に比べ高信号となり、このため腫瘍が見えやすくなった。インスリノーマの症例でもCNRは同様の傾向を示した。 考察:造影前の脂肪抑制画像では正常の膵実質が高信号を呈するため、低信号の腫瘍は通常のT1強調画像に比較し、より明瞭に描出されると考えられた。さらに膵周囲脂肪の信号強度を抑制することにより、造影剤投与後に濃染された腫瘍の膵実質外への進展をより明瞭に描出しえた。これらの点で、脂肪抑制画像は膵癌の進展範囲の推定および治療方針を決定する上で重要な情報を提供すると考えられた。一方、1)膵癌により正常の膵実質が消失した症例、2)後腹膜の脂肪が乏しい症例、3)嚢胞性膵腫瘍で薄い嚢胞壁を有する症例、4)出血を伴った嚢胞性膵腫瘍においては、脂肪抑制画像は通常のT1強調画像に付加的情報をもたらさなかった。
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