1993 Fiscal Year Annual Research Report
冠動脈バイパス手術における内胸動脈剥離用レーザーメスの開発と臨床応用
Project/Area Number |
05770992
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
廣田 潤 東京女子医科大学, 医学部, 助手 (80231554)
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Keywords | レーザーメス / 冠動脈バイパス術 / 内胸動脈 |
Research Abstract |
冠動脈バイパス術に用いられる内胸動脈の剥離を、迅速かつ確実に行うためのレーザーメスの開発と応用が本研究の目的である。レーザーソースは、組織の切開能力と止血能力を兼ね備えたNd-YAGレーザーを選定した。今年度の研究目的は、 1.熱損傷を内胸動脈に及ぼさない至滴レーザー出力の決定。 2.内胸動脈剥離と分枝の切断、止血に適したレーザーメスの作成。 3.犬を用いた実験での評価。 4.臨床応用、であった。 1.について、市販のレーザーメスを用いて実験的に犬の心筋にてレーザー出力を変化させて組織学的に評価すると、12〜15ワットの出力が、約1mmの熱凝固層とスムーズな切開能力を示し、至適出力と判断した。2.については、内胸動脈の解剖学的特徴を捉えた形状のレーザーメスを設計、開発中である。レーザーメスのプローベはファインセラミクス製で背側に凸の形状をしており、一方向にのみレーザー光が照射されるものを設計したが、現段階の光学的処理技術では内彎側のレーザー光遮断は完全に行えなかった。そこでこのプロトタイプのレーザープローベを用いて3.の実験的検討を行った。全身麻痺下、正中開腹の雑種成犬2頭に対し、左右内胸動脈をプロトタイプレーザーメスで剥離、止血し、人工心肺下に心停止を得た心臓に対し、冠動脈バイパス術を施行した。このレーザープローベによる内胸動脈剥離は、プローベ設計自体が未完成なために臨床使用に耐える使用感は得られなかったが、当初の目的の止血、切断は行えた。人工心肺離脱後、犬を犠牲死させた後に内胸動脈を摘出して組織学的検索を行うと、数カ所に血管外膜側から血管中膜側に到達する熱損傷を認め、さらにレーザー照射コントロールを厳密にするレーザープローベの設計および作成が示唆された。本年度の研究成果は以上である。今後次世代のプローベ開発を予定している。
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