1993 Fiscal Year Annual Research Report
揮発性麻酔薬の脳内伝達物質の分子構造に及ぼす影響について
Project/Area Number |
05771139
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Research Institution | Kagawa Medical School |
Principal Investigator |
塚本 郁子 香川医科大学, 医学部, 助手 (10183477)
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Keywords | エンケファリン / 吸入麻酔薬 |
Research Abstract |
脳内神経伝達物質であるエンケファリン(ENK)はペンタペプチドであり、その構造やレセプターについて研究が進んでいる。ENKの2次構造はわずかな環境の変化によって変わり、(extend型とhold型)それぞれの構造に親和性の高いレセプターに結合し様々な生理作用を呈する。また、麻酔薬感受性の異なるマウスの脳では、ENKの分布に差があることが知られている。麻酔薬によるENKの構造変化が明らかになれば、作用するレセプターの変化から麻酔を説明することができ、その作用機序解明に有用な知見を得ることが期待される。 そこで、ロイシンENKやメチオニンENKの水溶液に揮発性吸入麻酔薬を加ええたときのスペクトル変化を測定した。ENKには芳香族アミノ酸であるチロシン(Tyr)とフェニルアラニン(Phe)が含まれており、紫外吸収スペクトルの測定(日立U-3200)を行なった。また、分子構造変化のより具体的な情報をえるためにラマンスペクトル(日本分光 R-800)も測定した。ENK構成アミノ酸についても同様の測定を行ない、スペクトル解析に役立てた。 Tyrは、その水酸基の解離状態によって吸収スペクトルが大きく変化した。Pheについても、Tyr程ではないが、やはりpHによって変化をおこした。これらの変化は、遊離のアミノ酸とENKに共通の変化であった。変化の様式を確認したので、ここに揮発性吸入麻酔薬(ハロセン、イソフルレン、セボフルレン、エンフルレン)をそれぞれ水にとかして添加した。 しかし、残念ながら、これらの麻酔薬の水への溶解度は低く、添加した濃度域ではスペクトル変化を検出することはできなかった。低級アルキルアルコールは水溶性で、麻酔作用の研究に用いられることの多い溶媒である。ENKの水溶液にアルコールを加えるとスペクトルは大きく変化した。現在、この変化とTyrの解離状態、およびENK中の2つの芳香環の相対位置との関係を考察中である。
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