1993 Fiscal Year Annual Research Report
鼻粘膜上皮の杯細胞化生に関する研究-エンドトキシンを利用した動物モデル作成と細胞特異的分化マーカーと免疫組織化学法を用いた病態の解明-
Project/Area Number |
05771316
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
清水 猛史 三重大学, 医学部, 助手 (00206202)
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Keywords | 杯細胞化生 / 鼻粘膜 / 細胞増殖 / 粘液糖蛋白 / エンドトキシン |
Research Abstract |
鼻粘膜を含む気道上皮では,炎症に応じて粘液産生の増加が見られ,このことには上皮内の杯細胞過形成や杯細胞化生が深く関わっている。我々は鼻粘膜上皮における杯細胞化生と粘液分泌の機序を解明する手段として,エンドトキシンを用いた杯細胞化生の動物モデルの作成に成功した。 ラット鼻中隔粘膜上皮は,基底細胞,線毛細胞,杯細胞,非線毛内柱細胞の4種類の細胞で構成されているが,エーテル麻酔下に前鼻孔よりエンドトキシン0.1mg/100mulを3日間連日注入することで,容易に著しい杯細胞数の増加が認められた。また,投与終了後7日目には杯細胞化生は消失し,正常な上皮に回復した。定量的な各種上皮細胞数の検討により,杯細胞数の増加は非線毛内柱上皮細胞の減少と一致して生じ,総細胞数の変化は認められなかった。コルヒチン処理にて検討した細胞増殖能にも変化が認められず,この杯細胞化生は非線毛内柱上皮が直接杯細胞へ移行して生じると考えられた。異なったpH下のAB-PAS染色を利用して,杯細胞中の粘液糖蛋白の性状を検討すると,エンドトキシン刺激により新たに産生される糖蛋白はほとんどがスルホムチンであった。 インドメサシンやデキサメサゾンなどの抗炎症剤がエンドトキシンによる杯細胞化生を抑制したことから,杯細胞化生の機序はエンドトキシンによる直接作用以外に,各種の炎症反応を介した経路の存在が考えられた。また,好中球由来の酵素であるエラスターゼの鼻腔内注入でも同様の杯細胞化生が認められた。現在はこの動物モデルを利用して,杯細胞化生の機序についてより詳細な検討を行なっている。
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