1993 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト中耳真珠腫組織におけるインターロイキン1の存在と臨床病態の関連について
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05771360
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
志和 成紀 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助手 (20235766)
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Keywords | 中耳真珠腫 / インターロイキン-1alpha / 免疫組織染色 / TGF-alpha / Western blotting |
Research Abstract |
中耳真珠腫における組織学的病態の特徴は異常な上皮の増殖と分化であり、上皮下における骨破壊である。今回我々は、Macrophageや角化表皮細胞など様々な細胞で産生されるcytokineであるInterleukin-1alpha(IL-1alpha)に注目した。即ち真珠腫の増殖を解明する上で、真珠腫上皮におけるIL-1alphaの局在を明らかにすると共に、真珠腫の進展度、耳小骨破壊の程度、耳漏の有無、上皮下組織の状態、との関連性について比較検討した。方法は、手術時採取した中耳真珠腫組織を試料とし、SDS-PAGE、Western blotting法及び免疫組織学的手法を用いた。 この結果により、中耳真珠腫症例17例中10例でIL-alphaの発現が認められたが、対象として用いた外耳道皮膚ではIL-1alphaの発現は認められず、真珠腫上皮増殖機序におけるIL-1alphaの関与が示唆された。また、IL-1alphaは上皮下に肉芽増生の多い症例とは強い相関がみられ、特に鼓膜裏面の肉芽の存在が真珠腫上皮の増殖に関して重要な役割を果たしている事が予想された。一方、真珠腫の進展度、耳小骨破壊の程度、耳漏の有無についてはIL-1alphaとの明らかな相関は認められなかった。 今後の研究の展望であるが、今回の研究から、真珠腫の上皮増殖におれるIL-1alphaの関与が示唆されたものの、一連の上皮増殖機序を解明するためには他のcytokineや成長因子の関与を考える必要があると思われた。そこで我々は角化表皮細胞の増殖因子と言われるTransforming growth factor-alpha(TGF-alpha)に注目した。当教室のin・situ Hybridization法を用いた研究で、真珠腫上皮においてTGF-alphaの受容体であるEpidermal growth factor receptorの異常発現が認められる事がわかっている。従って、真珠腫上皮の増殖機序におけるTGF-alphaの関与が充分考えられ、我々は既に昨年来、免疫組織学時手法を用いて検討を行っている。今後はさらに、in situ Hybridization法、組織培養などの手法を用いて、真珠腫上皮増殖に関する研究を発展させていく所存である。
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