1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05771362
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
関 哲郎 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助手 (50196945)
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Keywords | 癒着性中耳炎 / 耳管機能不全 |
Research Abstract |
癒着性中耳炎は鼓膜の癒着を伴う炎症病態であるが、その詳しい成因については不明な点が多く、手術的治療の困難さや内耳障害を来す頻度も多いため、臨床的には重要な疾患であるといえる。本研究の目的は癒着性中耳炎は慢性耳管機能不全に伴う滲出性中耳炎の後遺症であるとした見地から、長期の耳管閉塞と中耳腔におけるマイルドな炎症刺激を持続した際の鼓膜、中耳腔粘膜の変化を促え、癒着の過程やそれに関する因子等について検討し、癒着性中耳炎の成因を明らかにすることである。本年度は動物をスナネズミに変更して実験を行った。スナネズミの中耳骨胞を開放し、耳管鼓室口を確認後、同部を電気凝固することによって耳管狭搾状態を惹起させ、長期間観察した。耳管閉塞に伴う中耳腔の陰圧化によって、鼓膜の陥凹、滲出液の貯留を認めたが、中耳腔粘膜、中耳腔内の変化には乏しく、また鼓膜の形態学的変化も軽度であった。このことは耳管を閉塞したのみでは、鼓膜の癒着を引き起こすのに十分な中耳腔の陰圧は形成されないこと、(これは中耳腔は中耳腔粘膜によってもガス交換が行われていることに起因する。)また鼓膜の癒着を引き起こすためには中耳腔に何らかの炎症刺激を加え、鼓膜、中耳腔粘膜を傷害する必要があることを示唆させた。そこで粘膜のガス交換を遮断することと、中耳腔に肉芽を形成させることを目的として、前記方法で耳管を狭搾させた後、中耳腔粘膜を掻爬し粘膜を傷害させた。これにより鼓膜は著明に内陥し、形成された肉芽組織を介して鼓膜と中耳腔粘膜が一部接着する症例の作成をみた。このことから、耳管閉塞と中耳腔粘膜障害によるガス交換の遮断によって中耳腔が陰圧化すること、炎症の持続によって粘膜が傷害され、その結果として中耳腔に肉芽組織が形成されることが癒着性中耳炎の成立に必要であると考えられた。
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