1993 Fiscal Year Annual Research Report
口腔癌の転移形質発現における細胞外マトリックスレセプターの免疫組織化学的研究
Project/Area Number |
05771778
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
横江 義彦 京都大学, 医学部, 助手 (30211650)
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Keywords | 口腔癌 / 転移 / 細胞外マトリックス / 免疫組織化学 / インテグリン / VLA |
Research Abstract |
癌細胞の転移性は局所における増殖性とともに悪性度の指標のひとつとして重要なものである。今回,転移性の因子として癌細胞と細胞外マトリックスとの接着相互作用に着目し,口腔癌におけるVLAを中心としたインテグリン分子の免疫組織化学的標識を行い,頚部リンパ節転移や遠隔臓器転移との関連性につき検討した。生検あるいは手術摘出により得られた口腔癌組織の新鮮凍結標本を作成し,フィブロネクチンやラミニンのレセプターであるインテグリンに対する抗体を免疫組織化学的に反応させ,転移性の指標とした。使用した抗体はIMMUNOTECH社製,抗alpha_4beta_1(VLA4),alpha_6beta_1(VLA6)インテグリンモノクロナール抗体で,正常皮膚,粘膜から癌にいたる過程において,発現性の変化が認められた。また神経鞘腫や悪性リンパ腫といった非上皮系の腫瘍には陰性であった。VLA4は正常粘膜では上皮内の顆粒細胞層と棘細胞層に陽性を示し,VLA6が基底膜付近に陽性であるのとは明らかに局在部位が異なっていた。やや低分化で浸潤傾向の強い扁平上皮癌では,VLA4は腫瘍内の一部と腫瘍周囲のリンパ球表面の両方に陽性を示しており,VLA6は癌胞巣の周囲に陽性であった。舌口底扁平上皮癌におけるVLA4と分化度に基づくGrade分類との関係をみると,80%の症例において腫瘍細胞の一部に陽性の所見が認められ,腫瘍の分化度が高くなるほど強陽性を示す傾向があった。スピアマンの順位相関係数は-0.794で,Grade分類との間に有意な負の相関関係を認めた。今回の検討結果からは転移性との関連は明確には認められなかったが,VLA4は上皮における分化の過程や悪性化に関わりをもつことが示唆され,さらには上皮の病的変化に対する免疫反応に関与する可能性があると思われた。
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