1993 Fiscal Year Annual Research Report
塩基部欠失DNA損傷(脱塩基部位)による突然変異と癌遺伝子活性化に関する研究
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05771965
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
紙谷 浩之 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 助手 (10204629)
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Keywords | 脱塩基部位 / 変異 / c-Ha-ras遺伝子 / 発癌遺伝子(癌遺伝子) |
Research Abstract |
最初に、脱塩基部位を含むオリゴヌクレオチドを合成するためのモノマーユニット、フォスフォロダイト体を化学合成した。次に、この化合物をビルディングブロックとして固相亜リン酸トリエステル法により脱塩基部位を含むオリゴヌクレオチドを合成した。配列は、5′ dGCC**CGGTGTGGGCAAGAG 3′ である(*はG又は脱塩基部位であり、この配列はc-Ha-ras遺伝子のコドン11から17に対応する)。このオリゴヌクレオチドをHPLCにより高純度に精製した。 オリゴヌクレオチドを数段階の酵素反応によって連結させることにより、ras遺伝子断片の合成を行い、哺乳動物細胞における発現に適したプロモーター(ラウス肉腫ウィルスのLTR)を有するベクターに挿入し、リン酸カルシウム法によりNIH3T3細胞へ導入した。 その結果、脱塩基部位を含むras遺伝子を導入した場合にフォーカスの形成が観察された。このことは、脱塩基部位によって変異が生じ、発癌遺伝子であるras遺伝子が活性化されたことを示す。さらに、フォーカスを形成したクローンを単離し、ゲノムDNAの抽出を行い、得られたDNAからPCR(ポリメラーゼチェインリアクション)法によってras遺伝子のみを増幅させ、塩基配列を調べた。その結果、脱塩基部位は修飾部位と隣接部位にアデニンへの変異を引き起こすことが明らかになった。 以上、本研究により、哺乳動物細胞中で脱塩基部位が生ずると変異を誘発し、また、そのことが発癌の引き金になっている可能性が明らかになった。
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