1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05780019
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Research Institution | Bunka Women's University |
Principal Investigator |
薩本 弥生 文化女子大学, 家政学部, 講師 (10247108)
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Keywords | 寝床内気候 / 寝返り / 皮膚温 / 睡眠 |
Research Abstract |
睡眠は疲労回復に非常に重要な役割を果たしている。よって快適な睡眠を得るための寝具と寝床内気候の研究は重要である。本研究では寝具の1つである掛布団に注目しその形状が寝床内気候に及ぼす効果について検討した。形状の異なる2種の掛布団を比較した。1方は掻巻き型布団で、他方は長方形型の標準型掛布団である。前者は東北地方など寒い地方の寝具で袖付きの掛布団である。掻巻き布団は睡眠者の肩部分が敷き布団まで隙間なく覆われるため保温性に優れている。日常的な経験から判断すると標準型の布団でも仰臥位で腕を掛布団に挿入した姿勢では肩部分が敷き布団との間に若干の隙間はあるが充分温かい。しかし、寝返りをすると隙間に流れが生じるので保温性低下が生じることが予想される。掛布団の形状の違いが寝床内気候や着心地のどんなところに生じるか検討するため以下の実験を行った。 気温24℃相対湿度50%の人工気候室に床面が網状の簡易ベットを設置し、その上にポリエステル内ワタの敷き布団を敷き、各々の掛布団を用いて被験者に一晩、睡眠させた。被験者は28歳成人女子1名。綿100%のパジャマを着装した。被験者の皮膚6カ所(首、胸、腹、大腿、足裏)および敷き布団上下および掛布団の上に温湿度計を貼付した。さらに睡眠時の寝返り等の状況を把握するためビデオ撮影を入床から起床まで約5時間行った。撮影のため実験室は電灯を点灯した。実験結果を以下に示す。 被験者の申告:睡眠中何度か覚醒したが寒さを感じて目が醒めることはなかった。電灯の明かりや人工気候室の音など通常と異なる環境のための覚醒であるだろう。温熱的には快適であった。 衣服内温度湿度:温度、湿度とも足裏以外は掛布団の形状による有為な差がなかった。また、寝返りによる寝床内の温湿度のダイナミックな変動はあまり見られなかった。皮膚温、湿度とも掛布団にかかわらず足裏以外の部位では34〜36℃、30〜40%に保たれていた。足裏の湿度がやや遅れて60から70%へ上昇した。 寝返りおよび覚醒回数:寝返り回数、覚醒回数とも布団の種類による差がなく寝返り回数は入床後1時間めが10回前後、その後1時間に6回程度に頻度が減少した。平均して8回/時間であった。覚醒回数は1.5回/時間であった。 今回の条件は比較的快適域であったので両者に差が表れなかった。今後、もっと寒冷条件で追加実験を行う。また、掻け布団両者の差を明確にするため掻巻き布団の脇と足元部分を全て敷き布団に巻き込み、完全な閉鎖型にして標準型と比較する予定である。寝床内の実験については公開発表する段階に至らなかったが、基本となる熱と水分移動についての基礎実験について以下の報告を口頭発表にて行った。15EA07:日本家政学会第45回大会、1993年5月23日、要旨集P.213
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