1993 Fiscal Year Annual Research Report
運動形態の違いが心房性ナトリウム利尿ペプタイド(HANP)の分泌に及ぼす影響-運動時の血圧上昇及び運動後の血圧の低下の調節因子の検討-
Project/Area Number |
05780078
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
斎藤 篤司 九州大学, 健康科学センター, 講師 (90195975)
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Keywords | 血圧 / 歩行 / サイクリング / 血漿カテコールアミン / 血漿アンギオテンシンII / 血漿アルドステロン / 血漿心房性ナトリウム利尿ペプタイド |
Research Abstract |
成人病の運動処方で一般に用いられている運動強度(50%Vo_2max)と運動形態(サイクリングと歩行)を用い、2つの運動形態間の昇圧応答について生理・生化学的に検討した。その結果、相対的に同一強度、同一時間の運動にもかかわらず、運動時の昇圧反応は歩行よりもサイクリングの方が強く、血圧低下レベルも大きいことが認められた。さらに、サイクリングでは歩行に比し、運動中、心臓の一回拍出量の指標である、O_2pulseの値が小さかった。これは、サイクリングでは歩行に比し、運動中、アイソメトリックな運動要素が大きく、その結果、脚筋の過剰な収縮により、末梢血管抵抗が増大し、静脈還流が妨げられ、結果として、一回拍出量に影響しているものと思われる。このことはサイクリングでの運動中の血中乳酸値が歩行に比し、有意に高値を示したことからもアイソメトリック要素との関わりが示唆された。また、血中の昇圧因子についてみると、生体内で最も強力な血管収縮作用を持つ血漿アンギオテンシンIIはサイクリングでは運動にともない歩行に比し有意に大きな増加を示し、運動終了後120分においても歩行に比し高い値を示した。さらに、循環血漿流量を増大させる血漿アルドステロンも同様にサイクリングの方が高い値を示した。これに対し、利尿作用と共に血管弛緩作用により、降圧作用を持つ、血漿心房性ナトリウム利尿ペプタイド(HANP)は他の昇圧因子と同様、サイクリングの方が有意に高く、運動中の昇圧作用に対し、拮抗的に働き、過剰な血圧上昇を抑制していることが示唆された。また、本研究においても、サイクリングに見られた運動周終了後の過剰な降圧応答を裏付ける明確な原因を認めるには至らなかったが、サイクリング後に見られた血漿アドレナリン値の急激な低下により裏付けられる可能性が示唆された。
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