1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05780414
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
江口 正 東京工業大学, 理学部, 助手 (60201365)
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Keywords | 分子軌道計算 / 酵素モデル / NADH / 遷移状態 / 分子設計 / 合成 |
Research Abstract |
本研究は、酵素反応における素反応を分子軌道計算を行なうことにより解析し、酵素の高い反応効率を分子軌道レベルで考察すると共にその結果を基盤として高い分子認識能あるいは高い選択性を有するモデル反応を人工的に設計することを目的としている。酵素反応の高い反応効率および高い選択性をモデル化するに当たって、遷移状態の安定化と反応のエントロピーの低減が効率、選択性に関与すると考え、それらを分子軌道計算によって算出し、酵素反応モデル、分子認識を計算科学的な手法で設計するという新たな方法論で行なうことを特徴としている。 まず、酵素モデル反応として、補酵素のNADHを利用する酸化還元反応を取り上げた。この反応の遷移状態の構造をNADの還元型(NADH)の活性部位であるジヒドロニコチンアミド誘導体によるフェニルグリオキシル酸メチルのマグネシウムイオン存在下における還元反応をモデルとして半経験的分子軌道計算によって算出した。その結果、マグネシウムイオンに基質とNADHモデルの3つのカルボニル基が配位しており、さらにもう1つ配位子の導入が可能であると考えられる遷移状態が得られた。 この遷移状態を実験的に確認すべく、ジヒドロニコチンアミド部分をジアセトングルコース誘導体に結合させたモデルを合成し、フェニルグリオキシル酸メチルの不斉還元を検討した。その結果、これらのモデルにおける不斉還元の立体化学は算出した遷移状態構造を考えると矛盾なく説明できることが分かり、遷移状態構造が正しく算出されていることが確認された。現在、得られた遷移状態の構造を基にさらに不斉還元の不斉収率向上が予測されるモデルを設計すると共に実験値と理論計算を比較検討し、より高度な酵素モデルへと発展させる予定である。
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