1993 Fiscal Year Annual Research Report
超微量ミックスト‐フロー=ラマン装置によるチトクロムP‐450中間体の構造決定
Project/Area Number |
05780485
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
江川 毅 慶応義塾大学, 医学部, 助手 (10232935)
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Keywords | チトクロームP‐450 / 高酸化ヘム / 共鳴ラマン分光法 / ミックスト‐フロー / クロロペルオキシダーゼ / compound I / compound II |
Research Abstract |
1 共鳴ラマン分光法によって単寿命中間体の構造解析を行なうためには、中間体の可視‐紫外吸収スペクトルに関する正確な情報を得る事が必要である。そこで、最初にチトクロームP‐450cam(P‐450cam)高酸化状態の吸収スペクトル決定を行なった。low spin ferric P‐450camと有機過酸(m‐chloroperbenzoic acid)との反応をラピッド‐スキャン法で観測した結果、これまで存在が指摘され続けていながら、その吸収スペクトルが確立していなかった高酸化状態の一つが、370nmと694nmに吸収極大を持つものである事を今回初めて明らかにした。このスペクトルは、P‐450と同様に第5配位子にチオレートアニオンを持つchloroperoxidaseのcompound I中間体(CPO I;lambda_<max>=367,688nm)と酷似している。室温、水溶液中でCPO Iの活性部位は,Fe=O構造である事を我々は既に報告しており、今回確認されたP‐450camの中間体も同様のものである事が期待される(投稿中)。 2 次に、超微量ミックスト‐フロー=ラマン装置による共鳴ラマンスペクトル測定の諸条件の確立および、本装置の性能の検討をかねて、既にラマンスペクトルが得られているCPO IおよびCPO II(chloroperoxidaseのcompound II中間体)の共鳴ラマンスペクトルの励起波長依存性を調べた。この結果、(1)CPO Iの400nm付近における吸収スペクトルのピークは、少なくとも二つ以上の異なった電子遷移からなる事、(2)CPO IIの活性部位構造は、他のペルオキシダーゼ類のcompound IIとは、かなり異なったものである事、の2点を強く示唆する結果を得た。 本研究の課題であるP‐450高酸化状態の共鳴ラマンスペクトル測定については、上述した結果をふまえて、予備的な測定を既に行ない、スペクトルのS/N比を向上させるべく、さらに実験を継続している。
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