1993 Fiscal Year Annual Research Report
発生早期の鳥類の頚髄に起こる運動神経細胞死に関する実験発生学的研究
Project/Area Number |
05780560
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
八木沼 洋行 筑波大学, 基礎医学系, 助教授 (90230193)
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Keywords | 細胞死 / 鳥類 / 神経発生 / 運動神経 / ニワトリ / ウズラ / アクチビン / レチノイン酸 |
Research Abstract |
本研究では、孵卵4-5日のニワトリ胚頚髄の前角に大量に起こる神経細胞死について以下のようなことを行った。 (1)標的の量を増やすことによって細胞死を食い止めることが出来るか検討した。 (2)既知の栄養因子等の生理活性物質の影響を明かにする。特にこれまでその受容体の存在が運動神経細胞において確認されているアクチビンやレチノイン酸の影響を調べた。 (3)体液性因子によって細胞死の開始時期が影響を受けるかどうかを明かにした。 (1)標的の量による調節 孵卵2日のニワトリ胚の頚髄を上肢レベルに移植すること(標的量の増加)を行ない、孵卵4.5日(st.24)で固定し変性細胞の数を計数してコントロールと比べた。その結果、移植された頚髄の前角において神経細胞死がおこっており、コントロールと有意な差がなかった。これは標的量を増やしても細胞死を食い止めることが出来ないことを示す。 (2)孵卵3日半の胚にアクチビンやレチノイン酸を全身的または局所的に投与して影響を調べたが、どちらも有意の変化が見られなかった。今後さらに投与量や投与時期について検討する余地があるものと思われる。 体液性因子の影響 ウズラはニワトリに比べ細胞死の開始が約半日早いことを利用して。孵卵1.5・2日でニワトリ-ウズラ間で相互に頚髄の移植を行い、移植片のなかでの細胞死の開始時期をコントロールと比べた。この結果細胞死の開始時期は移植片側が本来持っているスケジュールにしたがって開始されていた。このことは細胞死の開始を決める要因は宿主側の要因(例えば循環性の因子の消長など)によるものではなく細胞が本来持っている時間に従って細胞死が始まることを示唆するものである。 以上の結果は、鳥類の頚髄に早期に起る神経細胞死は、他の細胞との相互作用の結果で起る細胞死ではなく、細胞が本来持つプログラムによって強固に運命づけられた細胞死であることを示唆する。
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