1993 Fiscal Year Annual Research Report
失読症大脳の局所的形態異常発生に関する研究;モデルマウスを用いた発達神経科学的検索
Project/Area Number |
05780583
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
石井 加代子 慶応義塾大学, 医学部, 助手 (30193246)
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Keywords | 発達性失読症 / 発生神経科学 / 大脳新皮質 / New Zealand Black(NZB)マウス / マージナルゾーン / サブプレート / 自己免疫疾患 / モノクローン抗体 |
Research Abstract |
New Zealand Black(NZB)マウスは大脳新皮質に発達性失読症患者と同様な形態異常を発現し、ヒトの皮質発達障害のモデルとなる可能性が示唆されている。両者に共通な形態異常の最も顕著なものはマージナルゾーン(MZ)に於ける異所性神経細胞の集積とその下部皮質層での異常な線維走行である。これらはサブプレート(SP)とMZの細胞の機能の障害によるものと推測し、このような機能に関与する物質を解明するため以下のような条件を満たす物質についてモノクローン抗体を作ることを試みた。即ち;1)マウスからヒト迄保存されており、2)MZ又はSPの神経細胞の表面に存在し、3)神経細胞間相互作用に携わることによって皮質形成に関与する。又4)量的には極く僅かであるが皮質形成の時期には比較的豊富に発現する。この様な物質は抗原性に乏しく抗体ができ難いことが予想されるがNZBマウス自体が自己免疫疾患モデルマウスであり抗体産生能の高いことが知られている。そこでラット胎仔大脳新皮質の膜画分をNZBに免疫し、胎生19日目のラット脳切片でのMZとSPに対する免疫組織化学的反応性を指標に選別を行なった。樹立したモノクローン抗体のうちK1はMZに局在した反応性を示し、Western blottingの結果、主に280と270kDaのバンドを検出した。これらの反応は胎生後期に顕著であり生直後に急速に消失した。皮質内分布の点では層形成の極く初期にSPに反応が局在し皮質層の発達に伴ってMZへ反応性が移行し生直後に消失した。マウスでも胎生後期にMZに局在した反応が認められた。一部のNZBマウスの大脳皮質で脳回・脳溝構造に類似した奇形が観察されたが、このような部位でK1の反応性は皮質層内部にも認められた。このようにK1はSPとMZの関与した皮質発生機構に役割を果たす物質を認識している可能性が示唆された。
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[Publications] Kayoko Ishii&Keiichi Uyemura: "Study of development of cerebral cortex with a novel monoclonal antibody against cortical marginal zone" the Japanese Jounal of Physiology. 43(Suppl2). 302- (1993)
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[Publications] Kayoko I&Keiichi Uyemura: "A novel monoclonal antibody against the cortical marginal zone and subplate" Society for Neuroscience Abstracts. 19. 49- (1993)
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[Publications] 石井加代子、植村慶一: "大脳新皮質マージナルゾーンに対するモノクローン抗体を用いた皮質発生の解析" 神経化学. 32. 160-161 (1993)