1993 Fiscal Year Annual Research Report
ラット視交叉上核培養細胞の遺伝子発現制御による生物時計同調機構の研究
Project/Area Number |
05780603
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
篠原 一之 北海道大学, 医学部, 助手 (30226154)
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Keywords | 生体時計 / 視交叉上核 / 神経ペプチド / バゾアクティブインテスティナルペプチド / c-fos / 切片培養 |
Research Abstract |
概日リズムをもたらす生物時計は、哺乳類では、視床下部の視交叉上核(SCN)に存在する。本研究では、ラットSCNの培養細胞を用いて、神経ペプチドであるvasoactive intestinal polypeptide(VIP)や前癌遺伝子であるc-fosが、光による同調機構に関与する可能性について調べた。光同調に関与する物質は、生物時計と光の両者によって制御されていることが必要条件であることから、VIPやc-fosがこれら条件を満たすがどうか検討した。(1)外界の条件を一定にし、2時間毎に48時間に渡ってVIPの放出量を調べたところ、明確な概日リズムが見られた。しかし、同じ条件下でc-fos産物(Fos)の免疫組織化学的染色を行ってもFosは検出されなかった。以上のことは、自由継続リズム条件下において、VIPは生物時計によって制御されているがc-fosは制御されていない可能性を示している。(2)光情報は興奮性アミノ酸によってSCNに伝達されるので、in vitroにおける光刺激としてN-methy1-D-aspartate(NMDA)を代用し、VIPとc-fosの反応性を調べた。VIPのリズム位相は低濃度(10^<-5>M)のNMDAによって投与位相に依存して変化した。そして、NMDAのVIPリズムへの作用様式は、光がラットの行動リズムを変化させる様式に似ていた。一方、高濃度(10^<-4>M)NMDAによって、Fosは位相依存性にSCNに発現したが、低濃度(10^<-5>M)NMDAによってはFosの発現は見られなかった。また、NMDAのFosの発現への作用様式は光の行動リズムへの作用様式とは異なっていた。以上の結果から、VIPやc-fosのNMDAに対する反応性は生物時計によって制御されているが、その感受性は異なり、VIPの方が高感度性であり、より時計の光に対する感受性に似ていた。かくて、VIPは光同調機構に密接に関与していることが解ったが、c-fosの光同調への関与については積極的に支持する結果は得られなかった。
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Research Products
(1 results)