1993 Fiscal Year Annual Research Report
「プロセス」としてのドメスティケーションの人類学的研究:人間と家畜・栽培植物の関係を相互的な共生関係として把握する視点の確立をめざして
Project/Area Number |
05801040
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
掛谷 誠 京都大学, アフリカ地域研究センター, 教授 (30020142)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
重田 眞義 京都大学, アフリカ地域研究センター, 助手 (80215962)
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Keywords | ドメスティケーション / 栽培・家畜化 / 半栽培有用植物 / アフリカ / 南西諸島 / 共生的関係 |
Research Abstract |
本研究は、人間と動植物(家畜と栽培植物)の相互関係のなかに、どのような形で相利的な性質をともなった諸関係が存在するのかを日本とアフリカにおける現地調査によって得られた資料に基づいて検証し、その実体を具体的に描き出すことをめざしてきた。 動物のドメスティケーションに関しては、沖縄県八重山群島石垣島で夏山冬里方式によって飼育されている牛群について行動観察をおこなった。特に家畜化との関連が深いと考えられるホームレンジの規模と構造や母子関係、オス-メス関係、グルーピングの構造などについて予備的な調査を行い、これまで調査をおこなってきた隠岐西ノ島の牛馬飼養およびケニアの牧畜民トゥルカナの牛山羊飼養の資料と比較できる一次資料の検討をおこなった。また、牛群に対する人為的な関与の種類や程度と、それに対する牛群の反応を記録し、比較する方法について検討を加えた。 植物のドメスティケーションに関しては、沖縄県本島北部喜如嘉および八重山群島石垣島と西表島においてリュキュウイトバショウおよび半栽培有用食用植物の利用に関する調査をおこなった。日常的に利用されている家屋周辺の半栽培型植物が受ける人為的撹乱の程度を比較計測したうえで、標本を採集し、発芽・成長などの生理的形質や形態、収量などに関する栽培学的諸形質を調査した。現在、種子は冷温貯蔵庫に保管してあるので、比較栽培試験を行い、半栽培的条件によってもたらされた諸特性を明らかにする予定である。リュウキュウイトバショウの半栽培的利用に関する現地調査からはその人為的関与の様式について、アフリカにある近縁栽培種エンセーテと人間との相互関係と非常に類似した諸関係を見いだすことができた。その成果の一部は、平成5年12月にエチオピアで開催された国際エンセーテワークショップにおいて報告した。 今年度の研究の終了にあたり、研究会「ドメスティケーションの人類学的研究:人間と家畜・栽培植物の相利共生関係の解明」を開催して、報告と総括をおこなった。
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[Publications] 掛谷 誠: "「ミオンボ林の農耕民-その生態と社会編成」" 赤阪賢・日野舜也・宮本正興編『アフリカ研究』(世界思想社). 19-30 (1993)
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[Publications] 掛谷 誠: "「ベンバ族」" 綾部恒雄監修、信濃毎日新聞社編『世界の民 光と影(下)』(明石書店). 113-121 (1993)
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[Publications] 掛谷 誠: "「チテメネとファーム-ベンバ農耕の現在」" 『第30回日本アフリカ学会学術大会研究発表要旨』. 8 (1993)
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[Publications] 重田眞義: "「アリ人」" 綾部恒雄監修、信濃毎日新聞社編『世界の民、光と影(下)』(明石書店). 103-112 (1993)
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[Publications] 重田眞義: ""Multipurpose utilization of enset among the Ari in southwestern Ethiopia"" International Workshop on Enset,Program & Abstracts,Addis Ababa,Etiopia. 17 (1993)
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[Publications] 重田眞義: "「科学者の発見と農民の論理-アフリカ農業のとらえかた-」" 井上忠治・祖田修・福井勝義編『文化の地平線-人類学からの挑戦』(世界思想社). 457-476 (1994)