1993 Fiscal Year Annual Research Report
地域における在日朝鮮・韓国人の祭りとエスニック・アイデンティティ強化
Project/Area Number |
05801042
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
江口 信清 立命館大学, 文学部, 助教授 (90185108)
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Keywords | 在日朝鮮・韓国人の祭り / エスニック・アイデンティティ |
Research Abstract |
本研究の目的は、民族の祭りが朝鮮・韓国人にとって社会・文化的、精神的にどのような意味を持つのかを考察することである。平成5年度は、日本に朝鮮・韓国人のどのような祭りがあるのかを調査し、そのうちの5事例(東京都江戸川区三河島、川崎市、大阪市生野区、京都市西九条、福岡市)で行われてきた朝鮮・韓国人の祭り(民族文化祭)をとりあげ、現地を訪れて祭りを担ってきた中心人物らに(1)祭りがどのような過程を経て創造され、(2)彼らの同胞や周辺の日本人との間にどのような協力関係が作り出され、(3)それがどのようにして維持されてきたか、そして(4)結果的にそれへの参加者はどのように精神的に変化してきたかという点に焦点を当てて調査した。済州島出身者がとくに集住する江戸川と生野の場合には、祭りの担い手のメンバーシップは日本人には閉ざされているが、他の3箇所の場合、朝鮮・韓国人の出身地は多様性に富み、メンバーシップは日本人にも開放されている。とくに、後者の場合、日本人の身体障害者などこれまでの社会的弱者も多く参加している点が特徴として挙げられる。5事例の場合、祭りは1980年代以降始められた点で共通しており、祭りを担う朝鮮・韓国人は地域の人たちであり、祭りは地域運動の一環と考えられている。そういった点で、祭りが彼らのエスニック・アイデンティティの強化を促すという精神面での影響力の存在、そしてイデオロギーを越えて祭りを中心に朝鮮・韓国人が協力しあうという点でも共通しているのだが、どのような過程を経て創造されてきたのかという点に関しては、個々の地域の特殊事情が大きく反映し、互いに異なっている。ただ、生野区の祭りが他の地区での祭りの創造に大きく影響を与えたことははっきりしている。
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