1993 Fiscal Year Annual Research Report
「自発的結社」の問題を中心とする近代社会の比較史的研究
Project/Area Number |
05803008
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
山井 敏章 立命館大学, 経済学部, 助教授 (10230301)
|
Keywords | 結社 / ドイツ / 三月革命 / 明治維新 |
Research Abstract |
当初の課題のうち、本年度はとくにドイツと日本における「自発的結社」の展開について研究を進めた。このうちとくに新たな知見が得られたのは、1848・49年のいわゆる三月革命期におけるドイツの結社運動についてである。この時期が、ドイツにおける政党形成の搖籃期にあたることはつとに知られている。そしてその基礎にあるのは広範な結社運動であった。近年の研究が明らかにしつつあるのは、このような結社の結成が自由主義ないし民主主義のみでなく、保守主義の領域においても大きく進んでいたことである。たとえば革命期のプロイセンにおける民主主義的結社の数は約200、成員数は4〜5万人と推定されているが、これに対して保守主義的結社の成員数は1848年末の時点で少なくとも2万人、翌年半ばには300以上の結社が6万人をこえる成員を擁していた。三月革命期における保守主義をユンカーと等置する従来の理解は維持しがたい。それは農民・小ブル層、さらに労働者をもとらえる大衆運動として展開したのである。この事実は、これまで革命の「敗者」である民主主義者ないし自由主義者の側に偏りがちであった三月革命史の叙述に書き換えを迫るものと言えよう。また、近代的「市民社会」形成との関連で、「自発的結社」を「進歩的」なものと捉えがちであった従来の結社研究も不十分と言わざるをえない。翻って日本の状況を考えた場合、三月革命と対置しうる明治維新期において、大衆運動としての保守主義がどのような展開を示したか。このような観点をふまえたうえでの日独の民衆運動・結社運動の比較史的研究を現在進めている。
|