Research Abstract |
本研究の目的は,わが国における業績測定・評価システムが企業の経営戦略やマネジメント・コントロール・システムにどのような影響を与えているかを理論的・実証的に分析することである.そこで,まず企業戦略と業績評価システムを中心とした会計システムとの関連について理論的に分析し,そこで構築した理論モデルに基づいていくつかの仮説を提示した.次に,こうした研究のフレームワークをもとにアンケート調査を実施し,それを素材として検討を加えた. 仮説をもとに作成した質問調査票は,製造業のうちハイテク時代の中核に位置すると考えられる鉄鋼,非鉄金属,金属製品,機械,電気機器,輸送用機器,精密機器,およびその他の製造の8業種407社の経理担当役員(または経理部長)に郵送し,123社から有効回答を得た(回収率30.2%).戦略タイプにより業績評価システムの対応が異なることを統計的に検証した.さらに,事業部制,予算管理,および業績測定の多元性などの重要な課題についてのモデル化とその検証についても多面的に展開した.いまのところ,新しい知見としては,ア)戦略タイプ,組織構造,外部環境の違いにより業績測定・評価システムの運用プロセスに相違がある,イ)日本の雇用制度は能力と評価が一致しにくいが,今後,個人を前提とした業績評価が進む可能性が高くなってくる,ウ)利益額など量的な指標を業績判断で重視しようとする企業が減り,質的な業績指標を重視する傾向が強くなっている,の含意を導出した. 調査データをもとに,統計的検定によって理論モデルの検証をおこなった結果,有意味な業績評価システムの理論が構築され,それを随時発表していく予定である.なお,問題提起の一環として別記の論文を執筆した.
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