1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05805015
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大前 伸夫 大阪大学, 工学部, 助教授 (60029345)
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Keywords | トライボロジー / ナノグラム摩耗量 / QCM / ニアゼロ摩耗 / マイクロマシン |
Research Abstract |
本研究は膜厚モニターとして使用されている水晶振動子(QCM;Quartz Crystal Microbalance)の共振周波数変化を測定することによって極微小量の重量変化をオンラインで算出し、ナノグラムオーダの摩耗量を検出するトライボロジー技術を開発しようとするものである。QCMとしては光学研磨を施したATカット水晶板を用い、この基板上にスパッタコーティングによって金及びニッケル薄膜を作製した。水晶振動子と相対すべり運動を行わせる相手材は電解研磨によって作製したニッケル及びタングステンのマイクロポイントティップとし、水平及び垂直方向の駆動はピエゾ素子を用いて行った。また、垂直力及び水平力の検出はティップに取り付けた金薄板の変位を静電容量型非接触変位計を用いて行った。なお、測定ふん囲気はターボ分子ポンプによって10^<-6>torr以上の真空に排気した後、ソープションポンプによる排気で得られる10^<-3>torrとした。金薄膜とニッケルティップの組合わせで、垂直荷重5μN,すべり速度50μms^<-1>,すべり距離90μmの条件で実験を行った結果、累積の摩耗量として8ngが算出され、本測定法がナノグラム摩耗量を検出できる超高感度測定であることが実証された。また、同一の組合わせで垂直荷重のみを約10倍の5.4μNに増加させて実験を行った結果、40ngの摩耗量を検出したことから、垂直荷重の影響も著しいことが判った。PFPE系潤滑剤をスピンコートした試料では、水晶振動子の周波数変化が0.1Hz以下の場合が多く、この場合はサブナノグラムの摩耗量以下であることが明白となった。磁気記憶やマイクロメカニクスにおいて目標とされているニアゼロ摩耗、すなわち設定されたすべり回数以下では全く摩耗しない、というトライボロジー設計を現実のものとするためには本研究のような測定法は極めて有効であるものと評価される。また本測定法は大気中で作動できることから、さらに広い応用が確実である。
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[Publications] 大前伸夫: "マイクロマシンのトライボロジー" 機械の研究. Vol.46. 104-107 (1994)
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[Publications] 大前伸夫: "メゾトライボロジカルアプローチ" 機械の研究. Vol.46. 147-149 (1994)
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[Publications] 大前伸夫: "マイクロ概念の捉え方" 日本機械学会誌. Vol.97(掲載予定). (1994)
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[Publications] 大前伸夫: "トライボロジー現象のマイクロスコピック解析" 精密工学会誌. Vol.59. 22-25 (1993)
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[Publications] N.Ohmae: "Surface Diagnostics in Tribology" World Scientific(Singapore), 342(28) (1993)
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[Publications] N.Ohmae: "Surfac Modification Technologies V" The Institute of Materials(Cambridge,UK), 902(9) (1992)