1994 Fiscal Year Annual Research Report
イタリア・ルネサンス期の大規模工房の組織形態に関する研究
Project/Area Number |
05805051
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Research Institution | Aichi Sangyo University |
Principal Investigator |
石川 清 愛知産業大学, 造形学部, 助教授 (40193271)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 羊歯代 愛知産業大学, 造形学部, 講師 (60247749)
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Keywords | ルネサンス / イタリア / フィレンツェ / 工房 / 組織形態 |
Research Abstract |
ルネサンスの都市化現象に通底した芸術生産活動における組織編成の変容様態とその過程を考察することによって,ルネサンス期の芸術文化,都市文化の相貌の一端を明確にすることが本研究の目的であった。具体的な作業として,十五世紀に建設されかつその制作記録が現存する建設事業(石川分担)と絵画・彫刻制作過程(林分担),しかも相互に共通の職人が従事している可能性の高い大工房が受注した現場を,いくつか拾い出して分析を行った。職人個人の創意が尊重された初期ルネサンス期において建築家単位,あるいはその工房単位で,制作された建築の形態的特徴を把握するのは困難であり,個々の職人をより流動的に多次元的に捉える必要がある。それには多次元的な情報処理が必要であった。中世の工房制作とは異なった制作態度,工房運営などを,組織した職人たちの職能名称,血縁,専門技術,建設箇所,建設従事期間,報酬など,各建設現場ごとに活動を超えてフィレンツェの都市規模で統合的に分析・把握し,それをもとに十五世紀フィレンツェの組織的芸術制作のメカニズムをモデル化し,さらには他の工房の事例,他の都市の事例との比較検討を行って一般化し,職人組織の重層構造を解明するための基礎を構築することが研究の最終目標であったが,石川,林がそれぞれの分野での現地調達史料の分析を統合化する段階までは残念ながら到達することはできなかった。以下,考察できた成果を列記する。(1)ミケロッツォの協同制作活動の記録を整理することによって建設のための組織と彫刻のための組織作りに本質的な違いを見いだすことができた。(2)ネ-リ・ディ・ビッチ工房とダ・マイア-ノ工房との相互補助的な協同制作の過程を,主としてネ-リの『備忘録』Ricordanzeから読み取ることができた。(3)1992年に出版された総合的な工房研究Maestri e Botteghe,Pittura a Firenze alla fine del Quattrocnetoを訳出・整理し,それによって特に絵画工房組織の形態が把握できた。しかしながら,これらの総合的な解釈は今後の課題としたい。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 石川 清: "フィレンツェのドメニコ派修道院サンタ・マリア・ノヴェッラにおける“architectus"について(3)-建設に携わった助修士に対する十六世紀の評価:Fra RistoroとFra Sistoの場合" 日本建築学会 平成6年度日本建築学会大会学術講演集. F. (1994)
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[Publications] 石川,清: "中世末期のドメニコ修道会の都市進出と助修士の建設活動についてーフィレンツェのサンタ・マリア・ノヴェッラ修道院を事例としてー" 愛知産業大学紀要. 3. 35-42 (1995)
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[Publications] 林 羊歯代: "ルネサンス期イタリアの額縁に関する研究(1)-15世紀フィレンツェにおける“comrnice all′antica"成立の背景とその特徴" 愛知産業大学紀要. 2. 87-96 (1994)