1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05806027
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
緒方 武比古 北里大学, 水産学部, 助教授 (00104521)
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Keywords | 渦鞭毛藻 / Alexandrium tamarense / 従属栄養 / 連続培養 / 麻ひ性貝毒 |
Research Abstract |
渦鞭毛藻には従属栄養のものが数多く知られているが、麻ひ性貝毒の原因プランクトンは光合成色素を持ち、無機栄養塩を添加した海水培地中で光を与えると生長することから独立栄養であると考えられてきた。しかし筆者はこれらの毒生産機構を研究する過程で、これらが従属栄養的側面を持つこと、および毒生産にもこの側面が関与する可能性を示す知見を得てきた。本研究はこれらの点を明らかにするためAlexandrium tamarenseの成長と毒生産に及ぼす有機物、細菌の影響を培養系を用いて検討した。まず、本種をN欠乏状態に順化したところ、一定の成長を示す準連続培養状態に達し、毒性は実験開始時の約1/4に低下して安定した。この培養系に元の濃度にNO_3を添加したところ、生長は著しく増大し毒含量も元の値に復活した。この培養系にNO_3のかわりに酵母抽出物、核酸、タンパク質等の有機物を加えたところ、NO_3の場合と同様の現象が観察された。効果は核酸分解物で最も顕著であった。また、同様の現象は細菌の死菌懸濁物を添加した場合にも見られた。次に、低照度処理して生長を停止させた培養系に上記と同様の有機物を添加したところ、添加しない場合に比べ有為な生長が見られ、毒含量も増加した。また、これらの実験を抗生物質を用いてほぼ無菌状態にした培養系で実施した場合も同様な結果が得られた。これらの結果は、A.tamarenseが無機態Nばかりでなく、有機態のNを利用して生長し、毒生産を行うことを示もので、同種が独立栄養ばかりではなく従属栄養的側を合わせ持ち、生育の環境の変化に応じて両者を使い分けていることを示唆した。
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