1994 Fiscal Year Annual Research Report
アルツハイマー病老人斑へのトロンビン沈着の機序とその病的意義の解明
Project/Area Number |
05807056
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Research Institution | Tokyo Institute of Psychiatry |
Principal Investigator |
秋山 治彦 (財)東京都精神医学総合研究所, 神経病理研究部門, 副参事研究員 (20231839)
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Keywords | トロンビン / アルツハイマー病 / ミクログリア / 凝固系 |
Research Abstract |
アルツハイマー型痴呆症におけるトロビン生成の経路を明らかにするため、前年度に引き続き、剖検脳組織標本を用いて、凝固系組織因子(TF)、凝固第VII、V、X因子の局在を検討した。その結果、アルツハイマー病変における、外因系経路を介した凝固系活性化が示唆された。しかし、最近、神経系の培養細胞がトロンビンに対するのと同様の反応を、不活性の前駆体であるプロトロンビンに対しても示し、その細胞膜上に凝固第X因子とは異なるプロトロンビナーゼ分子を持つことが報告された。現時点では、その、凝固第X因子とは異なるプロトロンビナーゼ分子の精製・同定はなされておらず、勿論、特異抗体も作製されていない。したがって、実際の脳組織における発現の有無や各種病態における変化など、今後、検討を加える必要がある。さらに、脳ミクログリアはその膜分子であるMaclを介して外因系とは別に凝固第X因子を活性化する能力を持っており、脳におけるトロンビン生成経路は複数である可能性が高い。また、本年度、作製した抗トロンビンレセプター抗体は老人斑アミロイドを染色した。この抗体はトロンビンレセプター分子のうち、トロンビンで切断される部位に対して作製されており、in vitroにおいてトロンビンの培養細胞に対する作用をブロックすることが確認された。しかし、合成ペプチドに対する抗体であるので、さらに、異なる部位に対する抗体を作製するなどして、他の蛋白との交差性の有無等を検討する予定である。現在、レセプターの細胞内部分や、活性化で切断・分離されるペプチド等に対する抗体を作製中である。アルツハイマー病におけるトロンビンの局在は補体蛋白の沈着と一致しているが、凝固系と補体系はC4結合蛋白〜S蛋白〜C蛋白を介して相互作用を生じる。C蛋白はトロンボモジュリンの存在下でトロンビンにより活性化されて機能する。本年度はトロンビンの作用の一つとして、C蛋白活性化についても検討したい。
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[Publications] Haga,C.: "Methenamine-sliver staining:a simple and sensitive staining method for senile plaques and neurofibrillary tangles" Biotech Histochem. 69. 295-300 (1994)
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[Publications] Itagaki,S.: "Ultrastructural localization of membrane attack complex(MAC)-like immunoreactivity in brains of patients with Alzheimer's disease" Brain Res. 645. 78-84 (1994)
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[Publications] Hara,Y.: "Acidic fibroblast growth factor-like immunoreactivity in rat brain following cerebral infarction" Brain Res. 664. 101-107 (1994)
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[Publications] McGeer,P.L.: "Involvement of microglia in Alzheimer's disease" Neuropathol Appl Neurobiol. 20. 191-192 (1994)
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[Publications] Ikeda,K.: "Argyrophilic thread-like structure in corticobasal degeneration and supranuclear palsy" Neurosci Lett. 174. 157-159 (1994)
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[Publications] 秋山治彦: "アルツハイマー病におけるミクログリアの役割" 神経精神薬理. 16. 393-401 (1994)
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[Publications] Haga,C.: "Detection of neurofibrillary tangles by the methenamine-silver method:comparison with other silver stains and with immunostaining methods" Neuropathol. 13. 137-142 (1994)
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[Publications] 秋山治彦: "アルツハイマー病におけるアミロイド" 生物学的精神医学. 6. 61-79 (1994)
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[Publications] 池田研二: "エコノモ型脳炎後パーキンソニズムにおけるGlial fibrillary tangleについて" 痴呆Dementia(Tokyo). 8. 329-336 (1994)
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[Publications] 秋山治彦: "アルツハイマー病の免疫機序" 日本臨床. 52. 2990-2994 (1994)
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[Publications] 池田研二: "大脳辺縁系にargyrophilic grainが多発し、情動障害の目立ったargyrophilic grain dementiaの1例" 脳と神経. 46. 671-676 (1994)
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[Publications] Akiyama H: "Inflammatory response in Alzheimer's disease" Tohoku J Exp Med. 174. 295-303 (1995)