1994 Fiscal Year Annual Research Report
小腸上皮細胞の増殖とイソプレノイド合成経路-糖尿病におけるステロール合成と吸収-
Project/Area Number |
05807085
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
日高 秀樹 滋賀医科大学, 医学部, 助手 (80156603)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小島 秀人 滋賀医科大学, 医学部, 助手 (00225434)
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Keywords | 糖尿病 / コレステロール合成 / ステロール吸収 / 植物ステロール / シトステロール血症 / ジアミン酸化酵素 / 黄色腫 / 腸管 |
Research Abstract |
糖尿病動物では外因性ステロール濃度の増加が認められ、この病態の高脂血症の病態にステロール吸収能の亢進が寄与することを示した。さらに、これらの植物ステロール濃度の増加は、腸管上皮の生化学的指標であるヘパリン負荷後のジアミン酸化酵素活性とよく相関していた。コレステロールの生合成をコレステロール負荷によって抑制すると腸管の肥大は著明でなく、小腸上皮の増殖にコレステロール合成経路に依存した機構の存在が推測された。 細胞実験では、Caco-2細胞をTranswell上に培養し、極性を有するモデル実験系において、コレステロールの吸収・分泌を検討した。生理的濃度のインスリンは血管側より添加すると、ミセル化したコレステロールの血管側への転送・分泌を抑制した。この時、従来コレステロール吸収の律速酵素と考えられていたAcyl Co-A:Cholesterol Acyl transferase(ACAT)の亢進によるエステル化亢進のみでは分泌の増加は観察されず、細胞内におけるリポ蛋白のAssembly段階の吸収・分泌機構における重要性が明らかとなった。 これらの研究の途上に稀な遺伝的ステロール吸収異常をもつシトステロール血症の新たな1家系を発見した。この家系は、発疹性の黄色腫を認めた世界初の症例を含んでいる。また、高脂血症患者の血中植物ステロール濃度は、コレステロール合成阻害剤であるHMG-CoA還元酵素阻害剤の投与により低下するものの、コレステロール生合成を亢進させるとされる胆汁酸吸着剤では変化しなかった。このことは、ヒトにおいてコレステロール生合成の低下が植物ステロールの血中増加には直接は関係するものではないことを示しており、シトステロール血症の病因としては腸管のステロール吸収機構の異常にその原因を求めるべきであると考えられる。
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[Publications] 日高秀樹、中村高秋: "糖尿病とリポ蛋白代謝異常糖尿病におけるLDL代謝の異常" Diabetes Frontier. 5. 183-188 (1994)
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[Publications] 日高秀樹、繁田幸男: "高脂血症と糖尿病" 医学と薬学. 31. 253-256 (1994)
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[Publications] 日高秀樹: "異なる黄色腫を示したシトステロール血症の2家系" 治療学. 29. 353-356 (1995)
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[Publications] 小中一典、日高秀樹、小島秀人、繁田幸男: "腸管上皮細胞株(Caco-2)におけるミセル化コレステロールのエステル化及びその分泌" 糖尿病. (印刷中).
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[Publications] Hidaka,H.et al.: "Effects of an HMG-CoA reductase inhibitor,pravastatin,and bile sequestering resin,cholestyramine,on plasma plant sterol levels in hypercholestrolemic subjects." J Atheroscler Thromb. (印刷中).
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[Publications] 日高秀樹: "最新内科学大系 第9巻 「高脂血症」" 山本章 編 中山書店(印刷中),