1993 Fiscal Year Annual Research Report
乳児の音声コミュニケーション行動の発達に関する研究
Project/Area Number |
05808033
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
志村 洋子 埼玉大学, 教育学部, 助教授 (60134326)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今泉 敏 東京大学, 医学部・音声言語医学研究施設, 助教授 (80122018)
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Keywords | 乳児 / 音声行動 / 非言語的情報 / コミュニケーション / 感性 / コンテキスト / 聴取者依存性 |
Research Abstract |
本研究は、乳児と母親のコミュニケーション場面における乳児音声を解析することによって、1)母親は乳児の音声からどの様な非言語的情報をどの程度認知するか、2)それは乳児の月齢と共にどの様に変化・発達するか、さらには、3)乳児音声のどの様な特徴がどの様な非言語的情報を伝達するのか、を明らかにすることを目的としている。また、乳児に対する聴覚的嗜好実験により、4)乳児がどの様な非言語的情報をどの程度知覚できるか、5)それは月齢と共にどの様に発達変化するかを調べ、乳児の認知系の発達を検討することも目的としている。 今年度は当初の目的である作業仮説1)「乳児音声から母親は、快・不快など乳児の内的状態を反映した感性に関わる非言語情報や、食物の要求や対人通信的な非言語情報を他の聴取者より強くかつ正確に認知する。さらに、快・不快など乳児の内的状態を反映した非言語情報表出が先行し、泣き声に依らない音声での食物の要求や干渉拒否などの、対人通信的な表出は9から12カ月齢以降に成熟する」について、母親・保育者と、乳幼児に関係を持たない成人(大学生)、さらに幼児・児童を対象に乳児音声の聴取・評定実験を、乳児の数及び聴取者の種類をより増加して検討・確認を行なった。その結果、乳児は言語運用能力を発揮し始める以前から、音声上に観測される非言語的特性を活用してコミュニケーション行動を行い得ることが明らかになった。さらに、6カ月齢でも多様な非言語的情報を表出し得ることも明らかになった。また、乳児の発声時の環境(コンテキスト)と伝達される非言語的情報との関係は、母親・保育者・大学生など評定者による差異が一部見いだされたものの、評定者の経験等の差を超えた一般性も観測された。なお、幼児・児童を対象に実聴取験を行った結果、成人による実験結果に比べ、乳児音声上の非言語的情報をより豊かに聴取している傾向、とりわけ音声上の「快」「不快」の情報だけでなく多様な感性に関わる情報を聴取している可能性が示唆され、幼児期の音声知覚についての新知見が得られたものと考えている。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] 志村洋子: "発達初期段階における歌唱行動についての一考察" 音楽教育学. 22-2. 75-79 (1993)
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[Publications] 志村洋子、今泉敏: "乳児音声の感性情報認知における聴取者・状況依存性" 音声言語医学. 34-4. 417-424 (1993)
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[Publications] 志村洋子、今泉敏: "乳児音声における感性情報表出の発達と個人差の検討" 音声言語医学. 印刷中.
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[Publications] S.Imaizumi,et al.: "Acoustic Characteristics of Vibrato:Harmonic Analysis of the Singing Voice" Proc.SMAC93. (1993)
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[Publications] S.Imaizumi,et al.: "Evaluation of Vocal Controolability by an Object Oriented Acoustic Analysis System" J.Acoust.Soc.Jpn(E). 15-2. 113-116 (1994)
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[Publications] 今泉敏、他: "音響分析による声の可制御性の評価-遅いゆらぎの特性について" 信学技報. SP93-63. 47-52 (1993)
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[Publications] 志村洋子: "赤ちゃんとの話し方" ごま書房, 212 (1993)