1994 Fiscal Year Annual Research Report
量子ビームによるポリシランLB膜の構造制御とキャラクタリゼーション
Project/Area Number |
05808042
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
浅井 圭介 東京大学, 工学部, 助手 (60231859)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田川 精一 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (80011203)
広石 大介 東京大学, 工学部, 助手 (20199110)
勝村 庸介 東京大学, 工学部, 教授 (70111466)
石榑 顕吉 東京大学, 工学部, 教授 (90010975)
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Keywords | ポリシラン / 両親媒性 / LB膜 / イオン励起発光 / パルスラジオリシス |
Research Abstract |
今年度は昨年度に引き続き、LB膜作製可能な両親媒性ポリシランの合成と、実際に作製したLB膜を用いたイオン励起発光などの分光学的測定によりポリシランの電子物性の評価を行った。 合成は昨年度と同様の手法を用い、両親媒性poly(methylphenylsilane)(AMPMPS)に加え、新たに両親媒性poly(methylβ-phenethylsilane)(AMPMβ-PhS)の合成も行った。収率・分子量共に昨年度より高いものが得られ、効率よく両親媒化されておりLB膜作製に非常に適したものであった。 AMPMPSの溶液とLB膜の吸収スペクトル測定を行った結果、AMPMPSではLB配向薄膜化による面内圧力の増加が、主鎖骨格構造に影響を与えていないことがわかった。光励起発光測定では、AMPMPSではSi主鎖に起因する発光帯が355nmに現れ、AMPMβ-PhSに比べ25nm程長波長側へシフトしていることが観測された。このことは、AMPMPSではSi主鎖に直接結合しているフェニル基によって主鎖構造がtrans-trans zig-zag構造へ固定され、より安定化したためと考えられる。また、AMPMPSでは昨年度の測定と同様に430nm付近に発光が観測された。これは昨年度の報告では親水基中のamineに起因する発光と結論付けられたものであるが、今回の実験でAMPMβ-PhSでは観測されなかったことより、この可能性は否定された。AMPMPSのこの発光はSi主鎖と同一分子内のアンモニウム基との間で形成する励起二量体に起因するものと考えられる。これによれば、AMPMβ-PhSではSi-フェニル基の間に炭素鎖が存在するため、二量体を形成し得ないと考えられ、上記の実験結果と一致する。 電子線パルスラジオリシス法によりポリシランラジカルカチオンおよびラジカルアニオンの過渡吸収スペクトルの測定を行った。昨年度の実験結果ではラジカルカチオンの吸収は観測されず、正孔がアンモニウム基に補足されたためと結論付けたが、今年度の測定により正孔は主鎖上に非局在化して安定に存在していることが明らかになった。 AMPMPSのLB膜とCAST膜についてイオンビーム励起発光スペクトルの測定を行った。CAST膜では600nm付近に発光帯が現れているが、LB膜では観測されなかった。これは昨年度の実験結果と一致し、その時点ではCAST膜では窒素原子間でdimerを形成し発光するものと考えられた。しかし、LB膜におけるポリシラン分子配向機構の再検討等により、今回はSi主鎖と他の分子のアンモニウム基の形成する励起二量体に起因する発光と結論付けた。LB膜中では分子が面内配向しているために二量体形成が阻害されているものと思われる。
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