1993 Fiscal Year Annual Research Report
嫌気性超好熱古細菌の高度耐熱性酸化還元酵素の特徴と構造
Project/Area Number |
05808055
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
大島 敏久 京都教育大学, 教育学部, 教授 (10093345)
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Keywords | 嫌気性超好熱菌 / Thermococcus celer / Pyrococcus furiosus / グルタミン酸脱水素酵素 / NADPH脱水素酵素 |
Research Abstract |
超好熱菌は水の沸点である100℃付近の高温でも良好に生育する。その生体機能成分である酵素は通常の生物のものよりかなり高い耐熱性を持ち、酵素の耐熱性の分子設計を解明するのに良好な材料となりうる。また、原始的な生物である古細菌(始原菌)として、その酵素は進化の面からも注目されている。本研究では嫌気性超好熱菌を対象として種々の高度耐熱性酸化還元酵素の検索とその精製、特徴と構造の解明を行うことを主な目的とした。酸化還元酵素としては、Thermococcus celerのグルタミン酸脱水素酵素とPyrococcus furiosusのNADPH脱水素酵素を対象とした。まず、前者のT.celerのグルタミン酸脱水素酵素の精製に成功し、その分子量、サブユニット構造、基質特異性、補酵素特異性、耐熱性などの酵素化学的特徴を明らかにし、既に明らかにしているP.furiosus,P.woesei,T.litoralisの酵素のものと比較した。その結果、T.celerの酵素は触媒活性に関する多くの酵素化学的性質が三種の既知超好熱菌の酵素と類似していた。本酵素の耐熱性は10分間の処理では95℃まで変性せず、50%失活は97℃で起こった。この酵素は常温菌などのものと比較して極めて高い耐熱性を示すが、P.furiosusやP.woeseiの酵素よりは少し低く、T.litoralisの酵素とほぼ同様の耐熱性を示した。次に、NADPH脱水素酵素の高い活性を超好熱菌に見いだし、P.furiosusから精製に成功した。この酵素の分子量、基質特異性、耐熱性などの酵素化学的特徴を明らかにした。その結果、本酵素は1.0M NaClの共存下では100℃で90分でも熱失活せず、極めて高い耐熱性を示すことが判明した。これは本酵素が既知のNADPH脱水素酵素の中で最も高い耐熱性を持つことが分かり、解明のあまり進んでいない本酵素の耐熱性と構造の相関に関する今後の分子レベルでの詳細な研究に優れた材料を提供する。現在、補酵素やN-末端アミノ酸配列の決定、遺伝子のクローニングなどの研究を進めている。
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