1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05808071
|
Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
石 龍徳 順天堂大学, 医学部, 講師 (20175417)
|
Keywords | 海馬 / 神経細胞接着因子 / 神経発生 / 神経回路網形成 |
Research Abstract |
海馬体では、歯状回の顆粒細胞層の最内側に、顆粒細胞の前駆細胞が存在し、分裂・増殖している。顆粒細胞の樹状突起は様々な感覚入力を受け取っているので、その前駆細胞から分化した顆粒細胞は感覚入力の影響を受けながら発達する。したがって、この神経回路網形成が学習や記憶と関連することは十分に考えられることである。私は、成体ラットで新生した前駆細胞が顆粒細胞に発達する時には、その細胞表面に胎仔型の神経細胞接着因子(NCAM-H)が特異的に発現することを示した。本研究の目的は、NCAM-Hを分子マーカーとして、新生した顆粒細胞が、生体の海馬体内でどのような神経回路網を形成するのかを観察し、成体で起こる神経回路の付加に対するNCAM-Hの役割を推測することにある。ところで、このような顆粒細胞の増殖は年齢とともに減少する事が知られている。そこで本年度は,NCAM-Hの神経回路の付加に対する役割を検討する目的で顆粒細胞の増殖とNCAM-H発現との関係をいろいろな年齢の動物について検討した。 若年〜老齢のラットにチミジン類似物質のBrdUを投与し、分裂した細胞をラベルした。数日後にラットを屠殺し、海馬体の切片を作製し、抗-BrdU抗体と抗-NCAM-H抗体を用いて免疫二重染色を行った。そして、BrdU陽性細胞、BrdU+NCAM-H陽性細胞、NCAM-H陽性細胞の数を数えた。また、NCAM-H陽性の軸索も観察した。その結果、顆粒細胞の増殖率の減少に伴って顆粒細胞とその樹状突起のNCAM-Hの発現が減少していた。したがって、これらのNCAM-H発現は顆粒細胞の発達に関与すること思われる。しかしながら、その軸索である苔状線維のNCAM-H発現は、発現が弱くなったが、発現そのものは残った。これは、苔状線維のNCAM-H発現が苔状線維の発達後もなんらかの機能を果していることを意味する。現在のところこのNCAM-H発現は苔状線維の可塑性と関連があると考えている。
|