1993 Fiscal Year Annual Research Report
ユーゴスラヴィアにおける共和国・自治州間の経済的諸関係と地域経済に関する研究
Project/Area Number |
05832003
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
小山 洋司 新潟大学, 経済学部, 教授 (40036588)
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Keywords | 旧ユーゴスラヴィア / 統一的ユーゴ市場 / 1977年の外資取扱 |
Research Abstract |
第1に、旧ユーゴスラヴィアの地域経済に関する文献・統計に基づき、北の先進共和国、南の低開発共和国とコソヴォ自治州、そして中間に位置するセルビア共和国の経済構造を明らかにすることができた。 第2に、1965年以降の各共和国・自治州の経済的な相互連関を調べてきた。統一的ユーゴ市場の重要性が強調されていたにもかかわらず、現実にはその逆に1970年代に経済の地域的閉鎖傾向が進んだ。ボスニア=ヘルツェゴヴィナ共和国を例にとってみると、共和国の領域外で調達された商品の割合は1970年には36.9%であったが、1978年に27.1%に低下した。歴史の趨勢とは逆に、むしろ旧ユーゴスラヴィア国内では共和国・自治州相互間のしきいが高くなったのである。このような傾向は1971年憲法修正により共和国・自治州に大幅な権限が与えられたことから始まったと考えられる。 そのうえ、1977年の外資取扱・対外信用法は各共和国・自治州に、おのおのが国際収支・対外収支ポジションを作成し、予定した輸出と外貨収入を実現することを義務づけていたが、これは実際には、共和国・自治州をして他の共和国を犠牲にしてでも自領域内の外貨収入を増やし、外貨収支の帳尻を合わせるよう行動することを促した。こうして、経済の地域的閉鎖傾向がいっそう進むとともに、これらの共和国・自治州は直接、世界経済と結びつくようになった。ユーゴスラヴィア社会主義連邦共和国の分裂傾向は経済的にはすでに1970年代初めに始まっていたことが確認された。
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