1994 Fiscal Year Annual Research Report
フィリピンにおける経済自由化とその国内製造業への影響に関する理論的・実証的研究
Project/Area Number |
05832009
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Research Institution | OSAKA CITY UNIVERSITY |
Principal Investigator |
森沢 恵子 大阪市立大学, 経済研究所, 教授 (60137180)
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Keywords | フィリピン / 経済自由化 / 製造業 / 貿易 / 外国直接投資 / AFTA / 電気・電子産業 |
Research Abstract |
本研究は、経済自由化の過程で生じている,フィリピン製造業の構造変化の政治経済学的分析をめざすものである。本年度は,フィリピンのAFTA(ASEAN自由貿易圏)への参加による,今後のフィリピンへの投資と貿易の変化を考察し,経済自由化のなかでフィリピン製造業が直面している構造変化の具体的諸相の解明に努めた。AFTAを取り上げたのは,一つはフィリピンにとってAFTAへの参加は経済自由化の重要な一環として位置づけられているからであり,二つはこのAFTAをめぐるフィリピン国内の製造業者の対応の解明が,経済自由化の政治経済学分析にとって重要な意味をもつと考えるからである。本年度の研究によって得られた知見は,1.1990年度に入って,フィリピン製造業の構造改革がもはや遅延を許されないものとなっていること,もしこの構造改革にフィリピンが失敗すれば,フィリピン製造業の空洞化が進行し,フィリピン経済の脱工業化の進展が予想されことである。2.フィリピンの製造業者は,今や現実にこのような脱工業化の恐れを感じ取っており,フィリピン製造業の構造改革がジグザグのコースをとおしてであれ進み始めている。3.電気・電子産業のケーススタディをとおして明らかになった点は,フィリピン製造業の構造改革の一つの方向は,フィリピンの比較優位(豊富で低廉な労働力だけではなく中級技術者や科学技術者の一定程度の存在等)を活かした部品・部材生産の方向である。4.今後,経済自由化のなかでフィリピンへの製造業投資がのびるとすれば、部品・部材メーカーや中小企業からの投資がより多くなると予想される。次年度は本年度の研究を踏まえて,フィリピン製造業の構造変化の実態分析をより一層深めるとともに,これを1980年代以降の経済自由化過程のなかに位置づけてより広いパースペクティブのもとでの政治経済学的分析を試みる。
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